栄和人氏の女子レスリング現場復帰に残された問題点とは?
女子レスリングで数多くの五輪メダリスト、世界チャンピオンを育ててきた栄和人氏(59)が、至学館大学レスリング部の監督に復帰することが先日、同大学から発表された。 チャンピオンメーカーであると誰もが認める栄氏だが、教え子でもあった伊調馨らへのパワーハラスメント問題が浮上し、2018年4月に日本レスリング協会強化本部長を辞任し協会理事から解任、同年6月には大学レスリング部監督を解任されていた。 その後、昨年12月には外部コーチの形で大学での指導に復帰。今回、監督に再任されることになった。 大学側が発表した説明によると一部の選手たちが強く復帰を要望し、本人の反省と指導に対する熱意が確認できたため「サポート、および練習環境を用意するために実績ある栄氏を監督として再任する必要がある」と判断したという。 栄氏は12月19日から始まる全日本選手権で現場復帰する。大学側が、東京五輪前に栄氏を早期復帰させたことに違和感は残るが、ある意味、どう判断しようと自由だ。 だが、監督復帰の理由のひとつとして「一部の選手たちからの要望」を掲げるのであれば、それは危ういと思わざるを得ない。復帰を望んだわけではない選手が存在していることはもちろん、万が一、問題が再発したときの責任が選手に及びかねないからだ。 あくまでも管理者である大学側が、「パワハラ加害者としての過去はあるが、復帰するに足る条件を満たした」という周囲が納得できる事実を提示すべきだろう。 そして今回の復帰は、もう一つ問題が起きる可能性をはらんでいる。今後、この流れから来年の東京五輪に向けて日本代表の指導に復帰して、五輪のセコンドに付くようなプランが出てくる可能性があるのだ。そうなると大学の監督に復帰する場合と話は違ってくる。日本レスリング協会は公益財団法人であるから、栄氏自身とともに、いくつかの説明責任が生じてくるのだ。