「目の日焼け」濃いサングラスで安心する人の盲点 最新研究で判明、目の健康を損ねるのは「紫外線」だけじゃない
晴れている日だけでなく、曇りの日も紫外線は降り注いでいるため、年間を通して、日中の外出時はつねにいずれかの予防策を実施したい。 なお、皮膚に塗る日焼け止めのようなものは、目薬では存在しない。ヒアルロン酸などの成分が入った目薬も日焼けによるダメージを防ぐことができない。だからこそ、先に挙げた対策が重要といえる。 ■高温多湿も目の病気のきっかけに 最近になって、紫外線だけでなく別の環境因子も、目にダメージを与えることがわかってきた。その環境因子とは、高温多湿だ。
なぜ高温多湿が問題なのか。 それは、気温が上昇すると、体内の水分が蒸発しやすくなり、体温調節が困難になる。特に気温だけでなく、湿度も高い環境下では、汗が蒸発しづらく、熱が体内にこもりやすくなるため体温が上昇する。それに伴い、水晶体の温度も自然と上がるというのだ。 佐々木さんの研究によれば、水晶体の温度が35℃から37.5℃に上昇すると、水晶体のタンパク質の変性が進んで白くにごり、白内障が生じやすくなる。つまり、紫外線の影響のみならず、熱中症リスクが高い高温環境下でも白内障リスクは高まる、というわけだ。
■高温多湿から目を守る方法 では、高温多湿のときには目の健康のためにどんな対策をとればいいか。 夏場の高温多湿の日には屋内で過ごす時間をできるだけ増やし、十分な水分補給とともに、冷暖房設備を利用して室温や湿度を適切に管理することが熱中症のみならず白内障の予防にもなる。 熱中症になった場合の処置も同様だ。 体温を下げるために可能な限り涼しい環境で脇や首などを冷やすとともに、冷たいタオルなどで目の周りも冷やし、水晶体の温度もできるだけ上がらないようにすることが大切だという。
「目に対する紫外線対策や熱中症予防を日常的に行うことで、目の病気のリスクは軽減できます。さらに、早期に目の病気の兆候を発見し、適切な治療を受けるためにも、定期的に眼科検診も受けましょう」(佐々木さん) 紫外線によるリスクから目の健康を守るために、今日からでも適切な対策を心掛けたい。 (取材・文/石川美香子) 金沢医科大学眼科学講座主任教授 佐々木 洋医師 1987年金沢大学医学部卒業後、自治医科大学眼科入局。アメリカ・オークランド大学眼研究所研究員等を経て、2005年より金沢医科大学眼科学講座主任教授。「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長も務める。国内外で紫外線関連眼疾患の疫学調査を実施している。
東洋経済オンライン医療取材チーム :記者・ライター