「ラグビーウーマン」の憧れになれるか 早大女子の挑戦
【ベテラン記者コラム】大隈講堂の前でポーズをとる彼女たちの瞳は、きらきら輝いていた。4月18日、ラグビーの早大女子が東京・新宿区の同大内で設立会見を開いた。 国内大学の女子ラグビーチームとして10チーム目(女子選手が男子にまじって在籍しているチームは他にもある)、全国大学選手権優勝経験校では日体大に次ぐ2番目で、4月1日に設立。同11日に練習も開始した。だが、ここまでこぎつけるには紆余(うよ)曲折もあった。 主将を務める千北(ちぎた)佳英(スポーツ科学部3年)はいう。 「男子はラグビー部に入れるのに女子は(選手として)入れないんだ、と。伝統校で女子がラグビーをする環境は、なかなかない」 千北は5歳から世田谷区ラグビースクールでプレーを始め、中学卒業後は横河武蔵野アルテミスターズでラグビーを続けてきた。寺谷芽生(めい、スポーツ科学部3年)は千北とアルテミスターズの同僚。同学年の国谷蘭(政経学部3年)はワセダクラブで楕円球を追った。1学年下の岡本美優(スポーツ科学部2年)も世田谷区ラグビースクールの出身。顔見知りである4人がまず、「一緒のチームでやりたい」という思いを抱き、事態を動かした。 彼女たちの情熱を受け止めたのが、清宮克幸監督が大学選手権優勝に導いた2002年度の4年生で、FBとして公式戦出場経験もある柳沢真氏だった。昨年5月に最初に彼女たちの進言を受け、8月にラグビー部との話し合いも持った。おそらく反対意見も根強くあっただろう中で、関係各所との折衝を経て設立。柳沢氏はチームディレクターとして、今後も側面から支える。 ヘッドコーチを務めるのが15人制女子日本代表、7人制では16年リオデジャネイロ五輪に出場したオリンピアンの横尾千里さんだ。 筆者が「早大女子ラグビー部」と書いていないことには、学内の事情がある。立ち上がったばかりの現在は男子のラグビー部に付随する組織という立ち位置。恩蔵(おんぞう)直人部長が男女の部長を務める。今後5年間、部員を確保し、戦績もしっかり残し続けることができれば、大学内の「女子部門」として活動が認められ、「ラグビー部」に昇格する。 千北は「目標は二つ。一つは日本一を取ること。もう一つは社会に出たときに、女性として活躍する人材をこのチームから輩出していくこと」とプランを描く。国谷は「高校生が憧れるような部にしたい」と声を弾ませた。