ANAの777F貨物機、熊本空港に就航 半導体需要で定期便視野
全日本空輸(ANA/NH)のボーイング777F大型貨物機が3月29日夜、熊本空港へ初飛来した。熊本県と空港を運営する熊本国際空港会社、ANAの3者が連携した成田-熊本間のチャーター貨物便で、需要を見極めて将来的には週1-2便規模の定期便化を目指す。半導体受託生産の世界最大手である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県に進出していることから、貨物輸送需要に応える。ANAが国内線に777Fを投入するのは初めて。 【写真】熊本空港に就航したANAの777F貨物機 チャーター初便となった成田発NH9197便(777F、登録記号JA771F)は、午後7時15分に熊本へ到着。成田行きNH9198便は午後8時41分に出発した。到着便の積荷は、香港などからの自動車部品など貨物コンテナ3つ分約1トン、出発便は半導体関連製品、二輪車製造用部品、EV用各種部品などで、パレット8つ分約12トンを搭載した。 また、ANAは熊本空港に電子通関システム(NACCS)を2023年10月に導入。半導体輸出を見据えたもので、通関手続きの簡素化が可能になった。これまで輸出の事例はあったが、今回の777Fのチャーター運航で、初めて熊本でのNACCSを活用した輸入税関業務を行った。また、輸送時の衝撃リスクに配慮した精密機器輸送サービス「PRIO SENSITIVE」を提供する。 ANAは777Fを2機保有しており、2019年7月2日から国際線に投入。貨物搭載量は最大約100トンで、中型貨物機767Fの約2倍運べる。大量輸送に加えて、旅客機の客室部分にあたる「メインデッキ貨物室」には半導体製造装置や航空機エンジンなど大型貨物も積み込める。 熊本空港には、これまでメインデッキ貨物室に貨物を搭載する「ハイリフトローダー」と呼ばれる機材がなかったことから、羽田空港から運び込んだ。777Fの就航で、成田経由の国際貨物の取り扱いを本格化させる。 就航式典には、熊本県の蒲島郁夫知事と熊本国際空港会社の山川秀明社長、ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉会長が出席。片野坂会長は「熊本空港周辺はTSMCやソニー、東京エレクトロン(8035)、ホンダ(本田技研工業、7267)などクラスターが非常に充実している。知事の言葉を借りると100年に一度のビッグチャンスであり、国際航空貨物の恒常的な運航を目指したい。くまモンもきっと応援してくれる」と、式典に出席した熊本県のキャラクター、くまモンに語りかけた。
Tadayuki YOSHIKAWA