昭和初期の建物、文化拠点として再生 小樽、街並み保存し芸術で地域活性化
北海道小樽市に、昭和初期の建物を活用し、個展やライブが開けるアートスペースや飲食店、民泊が入る文化拠点が5月にオープンした。手がけたのは地元でジーンズショップを営む夫婦。小樽運河など観光名所がインバウンド(訪日客)でにぎわう一方、住民が暮らす通りには空き家となり、取り壊される建物も。2人は街並みを保存しながら芸術の力で人が集う場をつくり、「地域を活性化させたい」と話す。(共同通信=細川航) JR小樽駅と運河を結ぶ大通りから北に延びる梁川通り。銭湯やはんこ屋、パン屋などがある一角に、犬のイラストが外壁に大きく描かれた「裏小樽モンパルナス」がたたずむ。 1926年建築を中心とする3棟からなり、カフェが入るほか、アートスペースはギャラリーなどに利用されている。カレー店を出す木下ひかりさん(31)は「地域のつながりを感じ、若い人も受け入れてくれる雰囲気がある」と話す。 施設を運営する平山秀朋さん(56)と妻三起子(みきこ)さん(50)は、観光地としての表の顔とは異なり「コアな人に向けて自分たちが面白いと思うことを発信する」との意味を込め、「裏小樽」と名付けた。
地元生まれの三起子さん。短大卒業後に札幌で数年暮らし、実家に戻ったが、「子どもがたくさんいて活気があった」通りは古い建物が減り、面影が変わりつつあった。 「建物を残したい」。結婚し、梁川通りに暮らす2人は近所にあった3棟が空き家になったことから、2020年に使用許可を得て絵画の展示会や映画、音楽イベントなどを不定期で開催するように。老朽化した建物を文化の発信拠点として再生させるため、クラウドファンディングで改修費用を募り、地元や知人からの支援も含めて約300万円が集まった。 市の人口は1964年の約20万7千人がピークで、今年7月末時点でほぼ半減した。「小樽で生活する人の空気を感じてもらい、最終的に住んでもらえたら」と語る。