派遣社員なのに「正社員と同じ」業務を求められていますが、その分「給与上乗せ」は可能ですか?
派遣社員として働いていると、正社員と同等の業務範囲の対応を求められることもあるようです。もし、正社員と同等の業務を求められる場合、その負担に見合った 「給与の上乗せ」 は実現可能なのでしょうか。 今回は、派遣社員の給与体系や、正社員との違いについてみていきます。
派遣社員にも 「同一労働同一賃金」 は適用される
派遣社員にも 「同一労働同一賃金」 が適用されます。同一労働同一賃金とは、同じ勤務先で同じ業務内容や責任で働いているのであれば、雇用形態にかかわらず同一の待遇であるべきだという考え方です。 日本においては、かつて、正社員であるか否かによって、同じ内容の仕事をしていても待遇が異なる、ということが一般的でした。例えば、ある企業において正社員の給与が30万円の場合、同業務を行っている派遣社員は20万円になる、といった事例です。 しかし 「それは不合理な待遇格差であり、是正すべきだ」 という考え方が、同一労働同一賃金です。同一労働同一賃金の考え方は、国がガイドラインを定め、積極的に推進しています。現在では多くの企業がこのガイドラインを順守し、賃金体系を定めています。
「正社員と同じ業務をしているから、給与上乗せ」 と簡単にはいかない
同一労働同一賃金を前提にすると 「派遣社員でも正社員と同じ業務対応をしているのであれば、今より給与が上乗せになるのではないか」 と思う方もいるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。同一労働同一賃金とは、不合理な待遇格差を禁じるものです。合理的な理由にもとづく格差については認められています。 待遇格差が合理的か不合理であるかは、業務の範囲だけではなく、その方の能力や責任の程度など、諸般の事情によって決まります。そのため、正社員と同じ業務範囲であっても、その分が派遣社員の給与に上乗せされるとは限らないのです。 仮に、二者ともに在庫管理の業務をしていて、正社員の給与が30万円、派遣社員の場合は20万円としましょう。やや極端な例ではありますが、正社員の人の在庫管理の処理速度を10、派遣社員の人は、2であると仮定してみます。加えて、正社員は派遣社員の業務の管理監督責任を負っている、という状況であるとしてみましょう。 このような場合において、 「派遣社員は正社員と同じ範囲での業務を求められているから、20万円の給与に10万円を上乗せして、正社員と同じ給与30万円になる」 とはいきません。責任の度合いや、能力に違いがあるからです。 このように、一概 (いちがい) に 「派遣社員なのに正社員と同じ業務をしている」 との理由で待遇が上がるわけではないのです。