【漫画】「軽い気持ちならやめたほうがいいよ。死ぬよ!」危険を承知で山に入る『クマ撃ちの女』で本当に描きたかったこと
『クマ撃ちの女』#4
激しい怒りのあまり、極度の興奮状態となったヒグマと対峙する一人の女性猟師。著者自身、「リアリティのある現代の冒険活劇」と話す『クマ撃ちの女』(新潮社/Webマンガサイト「くらげバンチ」で連載中)について漫画家・安島薮太さんに話を聞いた。(全4回の4回目) 【漫画】激しく怒り極度の興奮状態となったヒグマとの対峙
「クマ撃ちの女」は“現代の冒険活劇”
――作品の軸であるエゾヒグマですが、描写から異常なまでに生々しい存在感を感じます。その源を教えてください。 そう言っていただけるとうれしいです。ただ、先に話したように実際に山の中でクマに出会ったことはなくて、資料として実際に見られたのは動物園のクマだけでした。あとは動画とか写真とか。でも昔から動物が好きで犬と一緒に育ってきたようなものなので、毛の生え方とか、細かい描写まで気を遣ってはいますね。 ――クマの描写にも、ハンターさんからのナマの声が活かされているのでしょうか。 もちろんです。クマの生態、こちらのアクションに対してどう動いてくるのかなど、かなり細かく話を聞かせてもらっています。でもまだ満足はしていなくて、もっともっとリアルを表現したいなと。今、連載では物語がラストに向かっていて、ここから更なる山場が控えているので、より力を込めて描きますよ! ――今後への期待感が一層高まりますね。ちなみに、お世話になっているハンターさんたちから漫画の感想が届くことはありますか? あります。これが結構うれしくて。ベテランハンターも多いので、語弊を恐れず言えば口うるさいような人もいるんですよ。最初は結構言われました「あんなんじゃない」とか。でもそれってしっかり読んでくれてるってことですし、本当にありがたいことなんです。しかも、そんな方々も今では「ハンターのリアルを描いてくれてありがとう」って言ってくれています。クローズドな世界で、しかも命のやり取りがある世界だから、たとえばドキュメンタリーとかでは映せない真実もあるんですよね。 ――フィクションの漫画だからこそリアルを描ける、というのが逆説的で面白いです。 そうですよね。その点、この作品を描くことはすごく意味のあることだなと思っています。 ――さて、7、8話は1巻の最後を締めくくるお話ですが、手に汗握る怒涛の展開に突入していきますよね。続く2巻以降を読んでいく読者に、何か伝えたいことはありますか? ひとつの山場となるシーンをここで描きました。ただ、この作品で本当に描きたかったことを詰め込んでいるのはここからです。『クマ撃ちの女』は“現代の冒険活劇”なので、以降で描いていくハンターたちの人間関係をとおして、狩猟漫画としてだけではなく、人間ドラマとしても楽しんでもらえたらなと思います。 ――ここから、物語の深みが一層増していくと。 あ、あとクマは本当に危ないです。ヒグマだろうが、ちょっと小さいですけどツキノワだろうが一緒です。両方とも非常に怖い存在なので、絶対近づいちゃダメですよというのも啓蒙していきたいかな(笑)。 ――そんなクマの恐ろしさに加えて、本作を通して読者に届けたいメッセージを教えてください。 言語化したくない部分もあるけど…(笑)。人も、クマも、動物も、文明も、全部“自然”なんです。自然って人間が作った言葉なんで。その境界って実はほとんどなくて、人間も自然の一部なんだよ、ってことを伝えたいですかね。 ――新刊の発売も控えているんですよね。 11月9日に12巻が発売予定です。物語は終わりに差し掛かり、これまで以上に盛り上がる展開と多くの読者が驚くであろう衝撃的な展開が待っています。 ――楽しみにしています。 取材・文/鳥山徳斗