【スーパーGT】性能調整がフェアじゃない! 元F1ドライバーから不満あがるほどのパフォーマンス見せる2号車muta。速さの秘訣はクルマづくりの緻密さか
■ライバルの声を、muta Racing INGINGとしてはどのように感じているのだろうか?
ではこういったライバルの声を、muta Racing INGINGとしてはどのように感じているのだろうか? 2号車のチーフエンジニアである渡邊信太郎エンジニアにこの件を尋ねると「僕も逆の立場なら同じことを言うと思います」と笑い、理解を示した。しかしその一方で、彼らとしても自分たちがBoPが緩いおかげで速いのだとは決して思っていない。 渡邊エンジニアが特に力を入れていると語るのは、「どれだけ細かいところまで管理してクルマを組み上げているか」という点。INGINGがメンテナンスを手がける同チームは、エンジニアリングサポートを受けているムーンクラフトの風洞を活用して空力開発をしていることでも知られている。各パーツを作り直し、洗練させることで高精度のセットアップの下地を作り、そしてオフシーズンには風洞実験データとテストでの実走行データの相関関係チェックを徹底することで、セットアップを“外す”ことが少なく、軌道修正も容易な環境としているのだ。 また2号車の立場としても、不満に思う部分はあるという。前述の通り、第4戦富士に向けてはGT300クラス車両の重量過多への対策として、獲得ポイントに応じて課されるサクセスウエイト重量の上限を80kgから50kgに引き下げる措置が取られたが、渡邊エンジニアは「本来は“サクセス”(成功)に対するウエイトが一種の性能調整になっているという認識ですが、それよりも車両ごとのBoP重量が大きい(GR86は60kg)というのは辻褄が合わないと思っています」と述べた。また、そこに速度抑制策の追加重量なども相まって想定を超えた車重になっていることで、テストで「ゾッとするようなもの」が壊れ、対応に追われたという。 車種もタイヤメーカーも多種多様なGT300においては、多かれ少なかれBoPに関する不平不満が止むことはないが、いずれにしても2号車mutaの驚異的な速さは今後もライバルにとっての頭痛の種になっていくだろう。
戎井健一郎