亀田和毅が世界王者になれた理由
スピードが乗ったストッピングジャブ
亀田3兄弟の末っ子、亀田和毅が泣きじゃくっていた。えんじ色のWBO世界バンタム級王者のベルトを肩からかけて殊勝なことを言う。 「ベルトはオレの夢、オヤジの夢。小さい頃からの夢を達成出来て本当に嬉しいです」 3兄弟揃っての世界王者は史上初の快挙だ。序盤から目に止まらぬスピードで圧倒した。ピンクグローブが眩しく感じた。速いジャブを上下にうちわけ、3連打、4連打の見栄えのいいパンチでジャッジの印象を高めながらリズムを作る。ナミビア出身の王者、アンブンダは、元来高いブロックをベースにした攻撃性に欠けたボクサーである。上背がなくアマチュアスタイルが抜けきれず怖さもない。ハッキリ言って2流の王者だ。スピードで敵わないから、接近戦を仕掛けようとするが、スイング系のパンチで揺さぶられ、時折、右をカウンター気味に浴びた。 和毅はボディにもパンチを集めリスクのないボクシングで着実にポイントを稼いだ。亀田家は、判定勝利になると批判を浴びるケースが多いが、この3-0の判定勝利に異論を唱える人はいないだろう。それでも専門家は、この試合をどう見たのかが気にはなった。 WBC世界フライ級王者、八重樫東(大橋ジム)に感想を聞く。 「スピードが最後まで落ちなかった。相当な練習を積んだんでしょう。ジャブのボクサーでしょうね。ストッピングジャブと言われる種類のジャブで、相手にボクシングをさせず自分のリズム、ペースにもなる。今日は危険を侵さず勝ちに徹するボクシングをしましたね。たいしたものです。まだ22歳でしょう。僕の大学4年の年代です。比べ物にならないくらい完成度が高いと思います」 私は、数年前、大阪は天下茶屋の喫茶店で聞いた亀田和毅の父・史郎さんの話を思い出していた。目の前に座った亀田父は、熱く3兄弟世界王者の夢を語り、3男、和毅の天才ぶりを話し始めると止まらなくなった。「ひとつ教えたら次の日には自分のモノにしている。3兄弟でセンスは一番。亀田家の最終兵器や」。