『ポケモンコンシェルジュ』は“現代の大人”に刺さる のん&ポケモンらしさ溢れる一作に
忙しい日々の中、癒しを求める心に応える場所が存在する。そこは、ポケモンたちがのびのびと遊び、心からの安らぎを見つける場所、「ポケモンリゾート」。Netflixとポケモンによる共同制作、新作ストップモーションアニメーション『ポケモンコンシェルジュ』は、私たちの疲れた心に新たな夢と癒しを与えてくれる。 【リスト】ピカチュウやカイリューも 『ポケモンコンシェルジュ』に登場したポケモン一覧(全29体) 都会で暮らしていたOLのハルは、長年交際していた彼氏に別れを告げられ、日常の小さなトラブルや都会生活のストレスに疲れていた。しかし、ハルの人生は未知の職業、ポケモンリゾートでのコンシェルジュとしての新たなスタートを切ることに。 ポケモンリゾートで働くことになったハルの目に飛び込んできたのは、水辺ではしゃぐウパーたちに、追いかけっこをするオオタチとコラッタ、子どもと遊ぶメタグロス……。最初は慣れない業務に困ることも多かったハルだが、仲間のスタッフとともにポケモンのお世話に奔走しながら、やがて本当の自分らしさに気づいていく。もちろん、スタッフも人間だけではない。スタッフポケモンのヤナップ、バオップ、ヒヤップもリゾートの仕事を一緒に手伝ってくれる。 ハルは、完璧主義者で努力家ゆえに、時には頑張りが行き過ぎてしまうことも。働くにあたってオーナーのワタナベから命じられたのは、「日が沈むまでに1匹のポケモンをハルと同じ気持ちにしてあげること」。ハルが気になったのは、控えめな性格でリゾートになじめないコダックだった。 ポケモンリゾートには、水に浮かぶことが得意でないコイキングや、怖がりのピカチュウなど、イメージとは違うポケモンたちも存在している。しかし、そんな彼らの一面もリゾートのスタッフは無理に変えようとはしない。その姿勢からうかがえるのは、それぞれの不得意なことも尊重し、自然体であることを肯定するメッセージだ。弱さとは、“自分らしさ”でもある。この「ありのままで良い」というメッセージは、常識に囚われて、つい本来の自分を見失いがちな現代の大人たちにも響くのではないか。 さらには、サトシの相棒として知られるピカチュウの描き方も面白い。活発な動きと元気な声、大きな瞳が印象的なピカチュウは、ポケモンの中でも主役級の存在感を放つ。そんなピカチュウの熱烈なファンで、最初は“黄色”と聞いて、真っ先にピカチュウを思い浮かべるハル。しかし物語が進むにつれ、彼女にとっての“黄色”はコダックを象徴する色に変わっていく。 主人公ハルの声を担当したのは、のんだ。ハルの演技にも、のんの“らしさ”が十分に活かされていたのではないか。実はその裏には、のんの演技を十分に活かすための工夫があった。 この作品では「プレスコ」という手法を採用し、先に声の録音を行い、その音声に合わせてアニメーションを制作している。そして『ポケモンコンシェルジュ』制作におけるポイントとなるのは、プレスコの際にのんの声だけでなく、彼女の演技もビデオで撮影された点だ。 アニメーターはこの映像を参考にして、ハルの身体の動きや表情も表現していることから、ハルの動きの中にものんの特徴がしっかりと反映されているとのこと。そう思うと、少々抜け感のある雰囲気が愛らしい、応援したくなるヒロインは“のんっぽさ”を感じさせるハルだったように思える。 また『ポケモンコンシェルジュ』では、アニメーション本編・劇場版の声を長年担当してきた大谷育江が、引き続きピカチュウの声を担当したほか、ハルがコダックを指差して「君に決めた!」と叫ぶシーンなど、従来のポケモンファンにとっても見逃せない魅力的なポイントが多数含まれている。序盤のオオタチがコラッタを追っているシーンについても、ポケモン図鑑に「てあしは みじかいが すばしっこく うごきまわって コラッタを おそう」とオオタチについての記述がある点を踏まえており、こうした小ネタを拾っていく面白さもあるだろう。 日々の疲れをリフレッシュしたいなら、『ポケモンコンシェルジュ』に相談してみると素敵な出会いが待っているはずだ。全4話で構成され、さらに各話が約20分というのも、まさに“手軽なリゾート”でありがたい。ポケモンたちと共に日々の喧騒を離れ、癒しの旅へと足を踏み入れてみよう。
すなくじら