岡林から花束を受け取る中日・加藤翔

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇４日　中日１―３ＤｅＮＡ（バンテリンドームナゴヤ） ◆加藤翔と抱き合う石川昂【写真】 　試合前に行われた引退セレモニーでの加藤翔への花束贈呈役が岡林だったのは、ファンなら納得の人選だった。２人の出会いは３年前の６月。ロッテから加藤翔が移籍してきた。岡林は２年目。高校時代は投手だった彼は、外野手としては「ど素人」。そんな岡林が「ああなりたい」と思ったのが加藤翔だった。なぜ？　どうやって？　コーチには聞きづらいようなことも、教えてくれた。 　「レギュラーではなかったかもしれないですが、加藤さんは守備がうまかった。とにかく教わったのはポジショニングの大切さ。１球、１球変える。そのためには根拠がないといけない。打者がこう振ったから、カウントがこうだったから…。それをイニング間にベンチに帰っては反省して、また守りにいく。その繰り返しでした」 　控えとしてベンチにいることが多かった加藤翔との答え合わせ。同じポジションの後輩に、自分の知識を惜しまず伝えてくれた。「ど素人」だったはずの若者は、短期間で「プロ」になり、翌年にはゴールデングラブ賞を取った。 　「その打球を捕れるか、捕れないかで、ひょっとしたら投手の人生が変わるかもしれない」。だから懸命に打球を追う。数十センチのポジショニングの違いで、長打をアウトに変えられるし、その逆もあるのが外野手の醍醐味（だいごみ）だ。今季の岡林は無失策。補殺はリーグトップタイの６を記録する一方で、２２２刺殺は同５位である。春先の出遅れと打撃不振で出場試合が減ったことが影響しているが、やはり岡林には誰よりもフライを捕る外野手であってほしい。 　引退を決めた加藤翔から譲り受けたグラブを、練習中にずっと使っている。花束を渡し「お疲れさまでした」。これからも、先輩は岡林のポジショニングをどこかで見ている。打者の反応、投手の調子、配球の予測。先輩をうならせるポジショニングで、長打をアウトに変えてほしい。