中国・国営金融の幹部に収賄で死刑判決 汚職根絶へ習政権の「容赦ない」取り締まり
中国・天津市の地裁はこのほど、国営資産運用会社「中国華融国際」の元上級幹部が、総額11億元(約238億円)の賄賂を受け取ってとして、異例の死刑判決を下した。習近平政権は今年1月、“金融大国”になるためのロードマップを示し、その中で汚職根絶に重点を置き、「容赦ない」取り締まりを命じていた。 【全画像をみる】中国・国営金融の幹部に収賄で死刑判決 汚職根絶へ習政権の「容赦ない」取り締まり 国営中央テレビ(CCTV )によると、天津市第2中級人民法院は5月28日、中国華融国際の元ゼネラルマネージャーだった白天輝被告が、自身の地位を利用して顧客から巨額の賄賂を受け取り、その引き換えに便宜を図り、数々のプロジェクトを進めてきたとして極刑判決を言い渡した。 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、習国家主席が政権を握って以来、中国では「トラもハエもたたく」をスローガンに反腐敗キャンペーンを展開。多くの官僚や国営企業幹部らが汚職事件に関与したとして有罪判決を受けてきたが、執行猶予なしの死刑判決は極めてまれだという。 不良債権の受け皿、中国華融資産管理傘下の企業である中国華融国際をめぐる収賄事件で、死刑判決を受けたのは白被告で2人目。2021年には、同被告の上司だった頼小民・元中国華融資産管理会長も総額17億9000万元(約368億円)の収賄と2513万元(約5億4500万円)相当の公有資産の横領、および重婚の罪で死刑判決が言い渡された。 頼被告は判決から約1カ月後、死刑が執行された。 ポスト紙によると、習政権による一連の汚職取り締まりで起訴され、死刑判決を受けて執行されたのは、2011年の浙江省杭州市と江蘇省蘇州市それぞれの元市長2人に続き、頼氏が3人目だった。 一方、白被告の判決公判では、同被告が捜査当局に対して事件に関与した人物の逮捕につながる重要情報を自発的に提供したことは評価したものの、「被告が受け取った賄賂は巨額であり、その犯罪が社会に与えた影響は特に有害で、国家と国民の利益に深刻な損失をもたらした」として死刑を宣告。 また、同被告の全財産没収も命じた。 白被告が控訴するかどうかはまだ明らかにされていないが、北京のある刑事専門弁護士は、同様の犯罪で被告が減刑された事例があることから、控訴する可能性が高いと推測した。 一つの例は2018年3月、山西省呂梁市の元副市長が11億7000万元(約254億円)の賄賂を受け取ったとして死刑判決を受けたが、その後、執行猶予2年が付けられ、2021年10月の上訴審では終身刑に減刑されたというものだ。 中国華融国際事件をめぐっては、他にも中国華融資産管理傘下の華融不動産の元会長や、華融投資の会長を含む、上級幹部4人らが裁判を待っている。 習主席は1月、中国の最高汚職監視機関である中国共産党中央紀律検査委員会の全体会議で“金融大国”を目指すロードマップを示し、金融リスク解消に向けた緊急課題を洗い出した。 その中で、「度重なる金融混乱と腐敗、金融監督とガバナンス能力の弱さ」などを「顕著な問題」として取り上げ、「深刻かつ複雑な」腐敗と詐欺の問題を根絶するためには「容赦なく取り組むべき」とし、徹底的な取り締まりを命じている。 ポスト紙の集計によると、同委員会は1月以降、国家規制当局や銀行など金融機関の上級幹部ら30人以上を逮捕している。
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