令和の時代に那須川天心はボクシングの世界王者になれるのか?
平成から令和へと時代が移った。平成には数々の名ボクサーが誕生した。“平成三羽ガラス”と言われたのが、元WBA世界スーパーフライ級王者の鬼塚勝也、元WBC世界同級王者の川島郭志、元日本フライ級王者、ピューマ渡久地の3人だった。世界王者は延べ64人が誕生。筆者の独断で“平成パウンド・フォー・パウンド”のトップ5を選ばせてもらえば、(1)元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎、(2)元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志、(3)元世界3階級王者の長谷川穂積、(4)元WBC世界バンタム級王者の山中慎介、(5)川島の5人になる。 “距離の境地”を極めた元WBC世界スーパーフライ級王者、徳山昌守、米国に進出、世界への扉を開いたボクサーとしては、元WBC世界スーパーバンタム級王者、西岡利晃と、屈指のパンチャー、元WBC世界スーパーフェザー級王者の三浦隆司も、当然、加えなければならないだろうが、KOの魅力、ボクサーとしての傑出したカラー、そしてカリスマ性などを考慮すると、やはり辰吉がトップにくる。 そして令和の時代である。 すでに時代をリードしているのは、WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26、大橋)で、令和の時代を語るときが来るのであれば井上が、その代表格になることに疑いはない。18日に英国のグラスゴーでWBSSの準決勝でIBF同級王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と対戦。これに勝てば決勝戦では世界5階級制覇王者の“レジェンド”ノニト・ドネア(フィリピン)と拳を交える。頂点に立てば日本のボクシング界の歴史を変えるような巨大契約が海外マーケットから舞い込む可能性もある。 ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、井上に肩を並べるようなニューカマーが令和の時代に現れるのか、というテーマがある。それを考えるとき、大晦日に元世界5階級制覇で無敗のレジェンド、フロイド・メイウエザー・ジュニア(米国)とボクシングルールのエキシビションで戦った“天才キックボクサー”那須川天心(20、TARGET/Cygames)の存在がクローズアップされる。 メイウェザー戦の前には、ホルヘ・リナレスの米国のジムで約2週間の特訓を積み、「ボクシングはこんなに面白いものだったのか。凄く濃い2週間で、いろんなものを吸収した。ステップ、パンチの硬さ、スピード。一番変わったのはステップ」と刺激を受けた。その後も、週に一度、帝拳ジムを訪れ、キックにつながる技術習得のひとつとしてボクシングの練習を続けている。 ボクシング転向については「キックで世界のトップに立つことしか今は考えていない、今後?どうなんですかね、わかりません」と言葉を濁す。だが、元日本&東洋太平洋スーパーバンタム級王者で、現在、アマチュアジム「GLOVES(グローブス)」の代表である葛西裕一氏は、「吸収力が凄い。教えることをどんどんモノにする。動体視力がいいから、当て勘がいい。なかなかいない天才。今やっても日本チャンピオンに勝てるんじゃないか。世界ランカークラス。あとはフィジカル面。2、3年でもっと伸びる」と評価していた。