鏡町のおわら1冊に 富山・八尾の保存会資料編纂部調査、女踊り普及に芸妓が貢献
富山県民謡越中八尾おわら保存会(金厚有豊会長)の資料編纂(へんさん)部は、富山市八尾町鏡町で昭和初期に最盛期を迎えた遊郭とおわらの発展との関係を冊子にまとめた。「鏡遊郭」で働いていた芸妓(げいぎ)たちが「新踊り」と言われる女踊りの普及に貢献したことなどを、当時の写真や新聞記事を交えて紹介。嘉藤稔部長(63)=上新町=は「過去の歴史を経て今のおわらがあることを、住民だけでなく多くの人に知ってほしい」と話す。 富山市八尾町中心部で毎年9月1~3日に行われる伝統行事「おわら風の盆」は、発祥から300年以上と伝わる。大正から昭和初期にかけて踊りや唄などが洗練され、現在のおわらの礎になった。資料編纂部は、おわら関連資料の収集やデータ化などに取り組む。 鏡町はおわらを受け継ぐ11町の一つ。昭和30年代ごろまで遊郭や料亭が軒を連ねる花街として栄え、新踊り(男踊りと女踊り)の発祥の地となった。同部がこれまで遊郭についてまとめた資料はなく、鏡町の代表的な遊郭の一つ「林松(りんしょう)楼」が2022年に解体されたのを機に調査を始めた。
調査に当たったのは嘉藤部長、黒田文子さん、植松孝文さん、井山裕之さん、福山裕美さん、千澤英里さんの部員6人。冊子では、林松楼で保管されていた昭和初期の写真を元に、1929年6月に日本橋三越本店(東京)で開かれた富山県特産陳列会で、「鏡遊郭」の芸妓から選ばれた11人が女踊りを初めて披露したことなどを解説している。 同遊郭の芸妓は高度な芸術と多くの舞台経験を持っていたことから、新踊りの振り付けを施した日本舞踊家の若柳吉三郎から初めて女踊りの手ほどきを受けた。同年8月に発足した「越中八尾民謡おわら保存会(現・県民謡越中八尾おわら保存会)」の役員にもなり、風の盆などに出演して女踊りの美しいイメージを発信したとしている。 冊子はA4判52ページで、100部作成。住民らおわら関係者に配布したほか、八尾おわら資料館(東町)などに置いている。