琴芝商店街を元気に、オリジナリティーあふれる開店続く、着本会長「人通りの増加に期待」【宇部】
着本会長「人通りの増加に期待」
地方の商店街を取り巻く環境は、大型店の進出やネット購入の浸透などで厳しさが増している。宇部市内の琴芝商店街も例外ではないが、今年になってからオリジナリティーのある新規店舗が相次いで出店。琴芝商店会の着本雅也会長(67)は「新しいお店のオープンによって、通りが元気になれば」と期待している。 琴芝商店街は旧宇部井筒屋から通称・産業道路までの南北600㍍の通りで、その近隣の店などを含めて同商店会を組織している。前身の琴芝駅通り商店会の会則施行は1964年で、当時の会員商店は165軒だった。2015年度の会員店舗は46軒で、現在は30軒に減少。この数年で空き店舗が増え、建物を撤去して駐車場にする動きが急速に進んだ。井筒屋の閉店による人通りの減少、後継者がいないことなどが影響している。 同会は、空き店舗への出店を推進するため、有利な制度の案内、周知に努めている。また、会員数を維持するため、今年度は会費を見直し、役員手当も減額。通りにはJR琴芝駅があり、利用する高校生らの往来があるため、安心・安全な商店街として街路灯や防犯カメラの維持・管理にも力を入れている。
老舗から独立し額縁・画材店
3月に出店した額縁・画材店「MARBLE(マーブル)」(琴芝町1丁目)は、オーダーメードの額縁・額装を提供する。長年、ふじた画房(朝日町)に勤めた地元出身の額縁職人、村谷英昭さん(54)と妻の真理子さん(同)が独立開業した。この場所に出店したのは、同画房に通じる道路沿いで常連客が来やすいことが理由。英昭さんは「琴芝駅がある通りの入り口に当たるこの店舗が、長く閉まっているのも気に掛かっていた。開業によって、通りに一つ明かりがともることを喜んでもらえたらうれしい」と話す。
書店とカフェ、ギャラリーも
先月、オープンした「工夫舎」(寿町2丁目)は本と展示とカフェの店。店主は宇部出身の元消防士の根来正樹さん(28)で、留学や東京での喫茶店勤務、店舗開発などを経て、自分の理想の店を作りたいと地元に戻った。自ら壁を塗るなどこだわりの店内には、食、まち、日本の心、職人の技、美学、学びなど、根来さんが選んださまざまなジャンルの新刊や古本を取りそろえており、カフェも併設。今後は、店のコンセプトに賛同する人に棚貸しをしたり、ギャラリーとして活用してもらったりして、新しい書店の形を提案していく。 根来さんは「中心市街地に近いため、ここに出店を決めた。まちづくりに意欲のあるプレーヤーたちの拠点となるべく、店を育てたい。ここに来れば自分を見つけられ、さまざまな情報が得られるメディアのような存在の書店を目指していきたい」と意欲を語る。 着本会長は「昭和の頃は、この商店街に来れば食べる物も着る物も何でもそろうと足を運んでもらっていたが、これからは強い個性や思い、ユニークなこだわりがある新店舗にも関心を持って来ていただけたら」と言う。 同商店街の今後について「井筒屋跡地に新しい施設が建ったら、また人通りも増えると期待している。錦町商店会の解散は人ごとではないので、にぎわい宇部や宇部商工会議所と連携して、できる限りのことをしていきたい」と話している。