連続最高益の上村工業、四季報が「独自増額」維持する理由
会社が通期の見通しを変えなかった理由
表面処理の総合メーカーで、半導体や電子部品向けメッキ技術の国内トップ企業。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の、ポスト5Gを見据えた最先端半導体パッケージ基板の実装とパイロットプラントでの検証プロジェクト(ジョイント2)に参画。高機能メッキ薬品で、実装部材の開発の一翼を担当している。写真は、大阪府枚方市の主力工場敷地にある中央研究所(写真:上村工業)
今2023年3月期の上期(4~9月)実績が大幅に上振れたのに、通期営業利益は横ばいという計画を上方修正しなかったため、株価が大幅続落――その銘柄とは、パッケージ基板向けメッキ液など、電子部品の表面処理用資材・関連機械を世界展開する上村工業(4966)だ。 この上期は、円安効果で売上高421億0500万円(前上期比27.5%増、期初計画比19.3%増)、営業利益75億4900万円(同21.3%増、18.0%増)と大幅に上振れて着地。この上期の上振れ分をそのまま乗せて、通期の売上高は820億円(前期比13.4%増)に計画数字を増額した。 一方、通期の営業利益は、140億円(同0.4%増)と期初計画を据え置いた。下期の為替前提は1ドル133.28円なので、足元の円安推移が継続すると、売上高と利益が上振れると見立てるのが自然。だが「主力の高密度半導体パッケージ基板(FC-BGA)向け薬品の生産量がかなり低下している」(橋本滋雄専務営業本部長)との理由で、下期の営業利益は上期の上乗せ分だけ期初よりも減る「実質減額」の見通しに変えたのだ。 株価は、上期業績と通期見通しを発表した11月11日午後13時20分を境に売り浴びせの様相に一変。翌14日にかけて大幅続落。発表前日の終値6980円から一時6270円まで、率にして10.2%の下落率を記録した。それでも地合いの強さは健在で、売り買い交錯しながらも、下値では好反発。下落幅を埋め戻す勢いで、9月13日以来となる終値7000円台に回復する値動きとなっている。 橋本専務は決算説明会の席上で「中国や台湾は7月頃から、国内は9月頃から変調が始まり、FC-BGAが前年同月比4割程度の水準まで生産量が減っている」と明かした。この極端な落ち込みは特にデータセンター向けで顕著だという。たとえばサーバーなど、HDD関連の最終製品に搭載するアルミ磁気ディスクなどに使う、当社の無電解ニッケルメッキ液の需要などが縮小した。同時に、金やパラジウムなどほかの貴金属を含有した無電解メッキ液も、半導体や電子部品に搭載する基板、半導体の生産調整の影響でじわり後退している。
本文:1,854文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
古庄 英一