「結婚はコスパが悪い」は本当? 世帯手取り年収に実は大きな差が 税理士が解説
たとえ扶養の範囲内でも、1人で働くより2人で働くほうが世帯収入も増えるのは当たり前ですが、メリットはそれだけではありません。 扶養家族がいれば税金負担も安くなります。独身者の税金が年間64万2300円なのに対して、夫婦の場合は2人分で56万1300円。世帯年収は夫婦のほうが高いのに、税金は約8万円も安いのです。 社会保険は、独身であろうと家族持ちであろうと支払い額は同じ。健康保険料は、たとえ扶養家族が5人いようと、1人分の保険料さえ払えば良いのです。さらに厚生年金保険料も、世帯主1人分を払えば、扶養家族であるパートナーの国民年金保険料分も支払ったことになります。 国民年金保険料を自分で負担するとなると、年間20万円弱を払わなければいけません。対して、扶養されている配偶者は1円も払わずに、国民年金保険料を払った人と同じだけの年金が将来もらえます。 独身者が将来もらえる年金は1人分ですが、扶養配偶者がいる家庭は、同じ保険料で将来もらえる年金が1年で約80万円(現行の満額支給の場合)増。10年もらえば約800万円、20年なら約1600万円も多くもらえるということです! 現役時代の手取りも、税金が安い分、家族持ちと独身者とでは年間で、扶養配偶者が稼いでくる年収130万円以上の差がついてしまいます。なかには会社から「扶養家族手当」が出る人もいて、そうなると手取りの差はもっと広がるでしょう。 家族持ちのほうが“優遇されまくり”です。「ちょっとずるいのでは?」と思うほどお得ですよね。
同じ世帯収入1000万円なら夫婦のほうが圧倒的にお得
ケース2は、世帯年収が1000万円の「独身者」と「夫婦世帯」の比較です。独身者は1人で1000万円の年収を稼ぎ、夫婦は600万円と400万円の合わせて1000万円の世帯年収があるとします。
世帯年収は同じでも、手取りは1年で63万円以上も違ってきます(図参照)。年間63万円ですから、10年経てば630万円の差! これはけっこう大きいですよね。 世帯年収が同じでも、2人で稼いでいれば、それぞれが所得税の累進税率で低い税率を利用できます。基礎控除なども2人分受けることができるので、1人で稼ぐよりも圧倒的にお得になるのです。 このように、税金や社会保険・手当といった点については、独身者のほうが圧倒的に「コスパ悪し」です。 一方で、自由に使えるお金は、独身者のほうが多いかもしれません。自分の稼いだお金をどう使っても、誰にも文句を言われないからです。配偶者がいると、「そんな高いエステ、必要?」「キャバクラとか行かないでよね」と釘を刺されることもあるでしょう。 しかし、独身者はそういったことがないため、コスト感覚がゆるくなり、出費が多くなってしまう可能性もあります。「独身はコスパが良い!」との思い込みで自由な出費を続けていると、老後の不安がセットでついてくるかもしれません。
板倉 京