東京都の財源は地方に奪われている?
東京都知事選挙が告示されました。東京都には、一国のGDPにも匹敵する経済力がありますが、そうした大きな経済力を持つ自治体ゆえに、東京都の税収が地方に大きく配分されてしまいます。都としては、不公平に感じられて仕方ない制度なわけですが、これはどういった仕組みになっているのでしょうか? まさに“特別”東京23区 都と特別区の「財政調整制度」とは
税金には大きく分けて国税と地方税があり、地方自治体が独自の財源として利用できるのは地方税だけです。所得税や消費税など主要な税は国税となっているため(地方消費税は除く)、地方自治体は法人事業税や住民税、固定資産税など限られた財源を利用するしかありません。当然、地方税だけでは多くの自治体が歳入不足となりますから、国から地方交付税交付金という形で財政支援を受けています(消費税の税収も一定割合が地方交付税交付金に充当されます)。 現在、47都道府県の中で、国から地方交付税の交付を受けずに独自の財源で運営できるのは東京都だけです。2016年度予算における地方交付税交付金はおよそ15兆円という巨額なものですが、これに加えて、地方には多くの補助金が提供されており、地方自治体が自主的に財源を確保できる割合は、自治体によっても異なりますが平均3割程度といわれています。俗に「3割自治」と呼ばれるのはこのためです。逆に考えれば東京都は本来はもっと多くの税収を確保できるということになりますから、東京都民の一部は、東京のお金が地方に強制配分されていると感じています。 この傾向は近年さらに顕著になっています。2008年度以降、複数回の税制改正が行われており、地方税収の一部が国税化されました。このうち地方法人税は、国が徴収したのち交付金として各自治体に割り当てられるものですから、東京は相対的に不利になってしまいます。税制改正以降、東京はすでに約1兆3000億円の税収を失っており、消費税10%への増税後は金額がさらに増える見込みです。 もっとも地方に税収が奪われているとはいえ、東京は日本のGDPの5分の1が集中する巨大経済圏ですから、東京都の財政状況は健全です。東京都の2016年度予算の一般歳出は5兆933億円ですが、都税収入は5兆2083億円となっていますから一般経費はすべて税収で賄えていることが分かります。 基本的に地方自治体は、その地域で得られる税収をもとに運営するのが原理原則ですが、日本の場合には、東京と地方の格差があまりにも大きいという問題があります。一方、東京にもお金をかけて対処すべき課題がたくさんあり、都民は犠牲を強いられているという解釈も成立しますが、この問題について議論を深めるよいきっかけとなるでしょう。