練習で上手くなる、試合で強くなる
2024年2月に開催された、世界卓球2024団体戦。日本女子チームは惜しくも金メダルを逃したものの、これまででもっとも絶対王者の中国を追い詰めました。決勝戦に臨んだメンバー個人の世界ランキングで中国チームは1位、2位、3位を占め、5位、16位、18位の日本チームとは大きな差があります。個々の実力差では大きな差がありつつも、中国を追い詰めたことを考えると、団体戦において、個人の実力以上の力が発揮されたといえるのではないでしょうか。まさに、個人の実力の足し算ではない、チームの力の本質かもしれません。 5年前、私は同じメールマガジンで「企業組織とは、個人競技の団体戦のようなものではないか」という視点でコラムを書きました。 その中で、「個人個人がもつビジョン、欲、プライド、目的は異なるものである」「『みんなで』勝ちたいという動機は、必ずしも初めから存在しない」という前提に立ち、「それでも、このチーム(組織)で勝つことの意味は何なのだ?」と考え、意味を見い出すことのできた集団こそが、本当の意味でつながり、連携や協力をつくり出せるのではないか、という視点を提示しました。 今回の日本代表女子チームの活躍を見て、上記の視点に改めて確信が深まると同時に、さらに興味深く感じたのは、選手たちの振る舞いやコメントから、チーム内で選手同士がより立ち入ったコミュニケーションをしていたことがうかがえる点です。
立ち入ったコミュニケーションがチームを変える
試合前、試合中のセット間、タイムアウト時間に、監督やコーチからの一方的なアドバイスだけでなく、選手同士で具体的な技術や戦術について検討し合うという姿を、今回ほどたくさん見た国際大会は初めてです。 熾烈な競争を経て代表として選出されているわけですから、各選手にはもちろん自信やプライドがあります。また、卓球はプレースタイルごとに戦い方が全く違うため、お互いに対して口出しが難しいスポーツとも言えます。 そんな中、決勝戦にエントリーされずベンチメンバーとなった伊藤美誠選手が、チームの勝利のために、自分の経験に基づくアドバイスを積極的にして勝利に貢献したり、雰囲気づくりにポジティブな影響を与えていたことは明らかでした。 今回は、チーム全員で金メダルを取るための連携と協力がそこにあったのです。 それでも、一歩届かなかった団体戦の金メダル。やはり世界で勝つためには、一人ひとりがもう一段、技術、戦略、メンタル面でレベルアップする必要があることに、改めて直面した瞬間だったともいえます。