センバツ高校野球 只見、全員が「全力疾走」 伸び伸び野球、町に勇気 /福島
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は第4日の22日、21世紀枠で選出され春夏通じて初出場の只見は、ナイトゲームとなった第3試合で大垣日大(岐阜)と対戦し、1-6で敗れた。勝利はならなかったが、選手らはチームのモットー「全力疾走」を徹底し、伸び伸びとしたプレーを見せた。過疎化と少子高齢化に悩む只見町に勇気を与え、甲子園の歴史に名を刻んだ只見ナインにはスタンド全体から、惜しみない拍手が送られた。【三浦研吾、玉城達郎、松本ゆう雅】 緑色に染まった只見のアルプス席が最高潮に達したのは四回だった。1番酒井怜斗(2年)が四球で出塁すると、犠打に敵失も絡み、2死一、三塁から山内友斗(3年)が直球を右前にはじき返した。三塁走者の酒井怜が生還し、破顔しながら主将の吉津塁(同)とハイタッチした。スコアボードには歴史的な「1」が記録された。 山内友の父喜伸さん(47)はメガホンをたたきながら両手を挙げて「やったー!」と声を出し、喜びを分かち合った。「打ってくれという気持ちで見ていた。夢のようだ。良い試合をしている。ここから反撃してほしい」と興奮気味に話した。 先発は高校入学後初めて背番号1を着けた酒井悠来(3年)。スタンドから見つめていた父隆典さん(40)は「周りに助けてもらいながら乗り切って」とエールを送った。 七回には吉津が死球で出塁、猪俣智生(3年)が只見2本目の安打となる左前打でつなぎ、得点圏に走者を進めたが続かなかった。 八回は、昨秋に背番号1を背負いながら登板できなかった大竹優真(3年)が登板。長身から投げ下ろす変化球を武器に無失点で切り抜けると、自身も野球部OBの父真也さん(36)は「大舞台で投げる姿を見られてうれしい。よくやってくれた」と涙をこらえた。 九回は二塁から室井莉空(3年)が登板。控え選手も含めて全13選手が出場した。文字通りの全員野球を見せ、会津地方の学校として63年ぶりの甲子園に足跡を残した。 ◇ユニホーム新たに ○…只見はユニホームを新調し、甲子園でのお披露目となった。白地に紺色のシンプルなデザインから、胸の「只見」の文字や帽子、ストッキングに赤が入り、右袖には「福島」の文字が加わった。指導歴が20年以上の長谷川清之監督(55)によると「25年ぐらい同じユニホームだったのでは」という。主将の吉津塁(3年)は「帽子もストッキングも全て変わった。色合いもかっこいい」と、夢舞台に臨む気分も新たにしていた。 ◇華添えた友情応援 ○…吹奏楽部がない只見の応援に華を添えようと、兵庫県立東灘高と同県立神戸鈴蘭台高の吹奏楽部が友情応援として一塁側アルプススタンドに駆けつけた。 2校は22日午後1時から1時間、合同で練習しただけで、ほぼぶっつけ本番で試合に臨んだが、息の合った演奏でスタンドを盛り上げた。 東灘高の中田奈歩部長(17)は「甲子園で演奏することはもちろん初めてだったので、この機会をくれた只見には感謝。演奏が少しでも選手たちの力になれば」と話した。