ガザ紛争で反米陣営の構築狙う中国、グローバルサウスの擁護者を強調
(ブルームバーグ): 中国の外交官トップは先週、国連で演説し、米国に痛烈な批判を浴びせた。パレスチナを国連の正式な加盟国とするよう勧告する決議案を阻止したとして、米国は「数十年にわたるパレスチナ人の夢を打ち砕いた」と断じた。
中国の国連大使を務める傅聡氏の熱弁は、単なる米国への対抗姿勢を示したように聞こえたかもしれない。だが、それ以上に重要な意味を持つパターンに一致した動きだと米当局者や専門家は述べている。具体的には、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲以降、中国はパレスチナ自治区ガザでの紛争を利用して、途上国で反米感情を高めようと取り組みを活発化しているという。
当局者や専門家らの話では、中国はかねて国連やネット上で、米国の立場を弱めることを狙ってきたが、足元ではガザ地区での死者数増加や人道危機に対する国際社会の批判が高まる状況を好機ととらえ、攻勢を強めている。
匿名を条件に語ったある米高官によると、中国はガザの紛争を利用して、米国について世界に不安定さをもたらす首謀者とのイメージを植え付けようとする一方、自国を平和促進の担い手として描いている。
中国はまた、米国内の反対派をあおることも狙っている。英シンクタンク戦略的対話研究所(ISD)は4月、「スパムフラージュ」と呼ばれる中国共産党系の工作員ネットワークが、右派の米国人を装ったアカウントを使い、ガザ紛争を標的に米国内の分裂をあおっていると指摘した。
ISDのリサーチ責任者、メラニー・スミス氏は「中国とロシアは、西側諸国のガザに対する政策が不人気だと思われていることに乗じている」と分析。両国の狙いは「世界には自分たちが率いる別の権力構造があるとの考えを推し進めること」だと述べる。
ガザの紛争はまた、米国と一部のグローバルサウス(新興・途上国)との間で緊張を高めている。ブラジル、インドネシア、インド、トルコなどの国々は、ウクライナ支援を求める米国の呼びかけを拒否。ハマスとの紛争でも、イスラエル側につきたがらない姿勢を示す。