ゲームやアニメで目標10社!「デジタルエンタメ」の街へ 静岡市、情報系学生の豊富さ売りに企業誘致
静岡市は地元の情報系学生の豊富さを売りに、2030年度までにゲームやアニメなどデジタルエンターテインメント関連企業10社を誘致する目標を打ち出した。地域経済の活性化とともに、就職時の若者の市外流出に歯止めをかける狙いだ。近年は市内で創業したり、サテライトオフィスを開設したりする企業の動きも生まれている。 21年に創業し、スマートフォン向けゲームの開発を手がける「テックチャオ」。五十嵐平馬社長(36)が結婚を機に静岡市に移り、1人で立ち上げた。現在は同市葵区中心街にオフィスを構えて17人の社員を抱え、海外でも人気のゲームアプリを配信する。 業界内では人材獲得競争が熾烈(しれつ)だが、五十嵐社長は「静岡市には情報系学生が多く、優位性がある」とみる。30年をめどに社員60人、年間売り上げ5億円の目標を掲げ、今年も市内の専門学校生らの採用を決めた。「静岡市には学生に向けたPRに力を入れてほしい」と期待する。 市によると、市内にはデザインやプログラミングを学べる大学・専門学校が8校ある。年間800人以上を輩出しているが市内の就職先が少ないため、約4割の学生が首都圏などに転出しているのが現状だ。一方、首都圏では人材確保のため地方進出を検討する企業が増加傾向にあるという。 市は10月、テックチャオを含む7社と、デジタルエンタメ産業の集積と人材育成に向けた連携協定を結んだ。デジタルエンタメ産業を成長分野に位置付け、企業誘致、市内の学生と就職先企業のマッチング、企業関係者による大学での講義などを推進する。難波喬司市長は「静岡に来ればデジタルエンタメで面白いことができる、という街にしたい」と意気込む。 「魔法少女まどか☆マギカ」「3月のライオン」などの人気作品を手がけるアニメ制作会社「シャフト」(東京)も、22年にサテライトオフィスを市中心部に開設した。地元人材の定着率の高さが理由の一つ。久保田光俊社長(65)は、監督やデザイナーのメインスタッフになるには10~20年が必要になるとし「東京は競合他社で飽和状態。技術習得のためには若い人に長く働いてほしい」と、静岡での事業展開に意欲を示す。 <メモ> 経済産業省によると、2022年の国内ゲーム市場規模は2兆316億円で、20年以降3年連続で2兆円超え。12年の約9800億円と比べ、2倍以上に成長している。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要が一因になっているという。 「家庭用ゲーム機とソフト」に対し、スマートフォンやパソコン、タブレットなどを利用した「オンラインプラットフォーム」が1兆6568億円で約8割に上る。特にスマホ向けゲームアプリが突出しているのが特徴。
静岡新聞社