年金の財政状態は〈2.7兆円の赤字〉…それでも「年金制度は崩壊しない」と断言できる“驚きの事実”【FPが解説】
「保険料を払っても元が取れない」は間違い
「でも、何十年も真面目に納めたって、支払ったぶんはちゃんと戻ってくるの? 支払った保険料より受け取る年金のほうが少なかったら、払い損だよ」 そんなふうに疑う声もあります。損か得かは一概には言えず、ここは悩ましい問題です。というのも、あなたが何歳まで生きるか、つまり、どのくらいの期間年金を受け取るかによって変わってくるからです。 はたして元は取れるのか。国民年金で考えてみましょう。 月額保険料は1万6,610円です。40年間で支払う総額は、792万2,800円になります。 65歳から年金を受け取ったとすると、月額は6万5,075円、1年間では78万900円です。 10年受け取れば、総額は780万9,000円ですから、支払った保険料とかなり近い金額になります。 損益分岐点はおよそ10年。10年以上受け取ると元が取れる計算になります。年金は生きている限りもらえるので、76歳以上まで生きれば得をするわけです。 男性の平均寿命が81歳であることを考えると、得になる確率は高いと言えるでしょう。いつまで生きられるかは誰にもわからないものの、酒・タバコをやっているからといって早死にするとは限りません。逆に、身体を壊して長生きするともっと悲惨ですし、いっそうお金が必要になります。 76歳より前に死んでしまうと、たしかに損をします。でも、そのぶんはほかの年金受給者の役に立ちます。 年金はかなりお得なしくみになっています。 そもそも、あなたは年金の保険料を半分しか払っていないとご存じですか。国民年金は国が半分負担し、厚生年金は会社が半分負担しているのです。受け取り始めてから10年で元が取れ、しかも一生もらえます。 繰下げ受給を選択すれば、年8.4%で増えていきます。銀行の金利や株式の運用と比べても、はるかにお得です。インフレに強いとまでは言えないものの、ある程度は対応できるようにもなっています。 長生きすればするほど、お金は必要になります。人生100年時代、ゆえに長生きにこそリスクがあるのです。目減りしていく貯蓄には不安を覚えますが、年金は一生受け取れます。 年金は長生きしたときに困らないための「保険」と考えてはいかがでしょうか。 長尾 義弘 ファイナンシャルプランナー