能動的サイバー防御法案、臨時国会提出見送りへ 首相交代で議論停滞
政府は、サイバー攻撃の被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御(ACD)」の関連法案について12月初旬にも召集される臨時国会への提出を見送る。複数の政府・与党関係者が7日、明らかにした。政府は有識者会議で論点を整理してきたが、岸田文雄前首相の退陣で議論が停滞。石破政権を支える自民、公明両党が衆院選に敗北して「少数与党」となったことも影響した。 【一覧】サイバー攻撃、私たちにもできる五つの備え 政府・与党は、臨時国会で野党の反発も予想されるACDの関連法案よりも、2024年度補正予算案を優先させる。 ACDは平時から通信を監視し、重大なサイバー攻撃の危険性が高い場合は相手方のサーバーに侵入して無害化する措置だ。政府は6月に有識者会議を設置。法制化に向けた中間的な論点整理を8月6日にまとめ、臨時国会への関連法案提出を視野に入れていた。だが、岸田氏が8月14日に退陣表明して以降、有識者会議は開かれていない。 ACDを巡っては、憲法21条が保障する「通信の秘密」や不正アクセス禁止法など現行法との整合性など課題や論点が多く残る。与党幹部は「重要法案なので、臨時国会には間に合わない」と述べ、来年1月召集の通常国会への先送りを示唆。政府関係者は「有識者会議の最終提言が出ていない中での法案提出は難しい」と話した。 これに関連し、自民の小野寺五典政調会長は7日、石破茂首相と首相官邸で面会してACDの速やかな法制化を要請。首相はその後、サイバー安全保障を担当する平将明デジタル相と官邸で会談し、有識者会議の最終提言取りまとめに向けた議論と、早期の法案提出に向けた作業の加速を指示した。【金寿英、内田帆ノ佳】