進む「ジャニーズ帝国」の復活…英BBCにケンカを売った東山紀之の狙い(元木昌彦)
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】 この国の言論の自由度は世界で70位。もちろんG7参加国中最低で、プーチン援護派のハンガリーの下でもある。 キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較 だが、性加害を受けた被害者たちを誹謗中傷する自由度は、世界のトップクラスである。 それが証拠に、「SMILE-UP.」社長の東山紀之が、3月30日に放送されたBBCのインタビューの中で、「誹謗中傷を苦に被害者の中で自殺者が出たりしているが」と聞かれ、「言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨しているわけでもなく、多分その人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思う時もあります」と答えたのだ。 当然ながらこの問題発言に批判が巻き起こった。すると東山は、週刊新潮(5月2.9日号)で、BBCが“故意”に自分の発言を省略して、「私が誹謗中傷を否定していない」と印象付けたと訴え、訂正と謝罪を要求する文書をBBC側に送り付けたのである。 腑抜けたこの国のメディアなら、旧ジャニーズの威光に恐れ入ったかもしれないが、BBCは毅然と、こう返した。 「私たちは、自らのジャーナリズムに自信を持っています」 当初から、ジャニー喜多川に“寵愛”されたといわれる東山が、被害者たちへの補償業務を行う「SMILE-UP.」社長に就くことに不安が囁かれていた。だが、今となってみれば、東山がやろうとしていることは、ジャニーの汚名を少しでもすすぐことではないのかと思わざるを得ない。 被害者を名乗る中に虚偽の人間がいると、「SMILE-UP.」が早々と声明を発表した。これは当初の「幅広く補償できるよう、立証責任を決して被害者に転嫁しない」という方針を撤回したものであり、新たに名乗り出ようと思っている被害者を萎縮させる意図があったはずである。 さらに被害者救済委員会の聴取はまるで「尋問」のようだと被害者たちは訴えている。どのように触られたのか、射精はしたのかなど根掘り葉掘り聞かれ、セカンドレイプのようで、心身に不調をきたす者も多いといわれる。しかも、臨床心理士の立ち会いもない。 どうやって補償額を算定したのかの基準も不明確など、とても被害者に寄り添っているとは思えない対応で、被害者たちから怨嗟の声が上がっている。 いまだに、自身とジャニーとの“関係”について説明責任さえ果たしていない東山が、被害者をむち打つなど、許されるはずはない。だが、節操のないテレビ局の中には旧ジャニタレを起用する動きが早くも出てきている。 4月10日には、マネジメントを引き継いだ新会社「STARTO ENTERTAINMENT」所属のタレントたちが東京ドームで公演を開催した。まだ補償が半分にも満たないのに強引に見切り発車するやり方は、世間を見くびっているとしか思えない。 しかも同じ日、「嵐」が「株式会社嵐」を設立したと発表したのである。彼らは今年11月に25周年を迎える。ファンたちに再活動かとの期待を抱かせるが、週刊文春(4月25日号)は、設立は年間20億円ともいわれるファンクラブ維持のため、会員をつなぎ留めておくことが目的の目くらましで、“あこぎな商法”だと難じている。 それに四十路を超えた男たちが今更アイドルでもあるまい。被害者の二本樹顕理は「嵐」の二宮和也と同期だという。二本樹がジャニー喜多川の“餌食”になっていたのに、二宮が“無傷”だったとは信じがたい。まずメンバー一同、会見を開いて「疑問」に答えるべきである。 旧ジャニーズ帝国復活をもくろむ東山紀之も「SMILE-UP.」の社長を辞するべきことは、いうまでもない。 (文中敬称略) (元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)