島っ子ガイド 地元愛育む 17年目 全国的にも評価
鳥羽市の離島・菅島で、地元の小学生が観光客に島の自然や生活文化を案内する「島っ子ガイド」の取り組みが、スタートから17年目を迎えた。観光客からは「子どもたちの地元愛が伝わってくる」などと好評で、全国的な注目を集めている。島の少子高齢化が進む中、地元有志は来年度から、都市部の小学生とその家族に1年間、島の生活を体験してもらう「島っ子ガイド留学」を始める。(新良雅司、写真も)
来場者と文通
「菅島灯台は、現存する日本最古のレンガ造り灯台で、国の重要文化財に指定されています」 9日に行われた「島っ子ガイドフェスティバル」。市立菅島小学校4年の児童(9)が元気よく説明した。年に1回開かれるフェスティバルは、全校児童17人が総出で観光客を案内する「緊張の1日」だ。 おそろいのTシャツを着た児童が港に並び、県内をはじめ愛知、岐阜県から島にやって来た計28人を「ようこそ! 菅島へ」と出迎えた。子どもたちは3班に分かれ、島の観光名所や、のりの加工場、住民がよく利用する商店や寺院などを約2時間半かけて巡った。 5年の女児(10)は、磯着姿の海女たちがアワビの初採りを競う「しろんご祭」について解説。「お客さんと一緒に歩いている時もたくさん話ができたし、発表も詰まらずに言えてよかった」と安心した表情を見せた。 玉城町から娘(10)と訪れた坂本雅代さん(43)は、昨年に続いて2回目の参加。娘は前回のフェスティバルで菅島小の女児と友達になり、文通を1年間続けてきたという。坂本さん親子は「島は自然が豊かで楽しい。来年もまた来たい」と満足そうに話した。
教科書で紹介
島っ子ガイドは、島外の人たちと接する機会が少ない子どもたちに、コミュニケーションやプレゼンテーションの能力を身につけてもらおうと、2008年に始まった。全国的に評価され、18年からは小学6年生の道徳の教科書でも紹介されている。 児童らは、夏休み中に島内を歩いて観光スポットを訪れたり、家族や住民に話を聞いたりして、フェスティバルで案内したい場所を選ぶ。生活科や総合的な学習の時間を使い、市内でエコツアーを企画・運営する「海島遊民くらぶ」の指導を受けるなどして、ガイドの練習に励んできた。 橋本清久校長は「子どもたちが菅島のことを調べることで、地元の良さを再発見し、島に誇りと愛着を持つことができる。児童の島への思いが、お客さんによく伝わっていると思う」と話している。
「離島留学生」を募集
菅島で島っ子ガイドが始まった08年に750人余りだった島の人口は、現在は450人ほどに減少した。高齢化率は約46%に達する。 島民有志でつくる「菅島の未来を考える会」は、親子で島に移住し、来年4月から菅島小学校に通う「離島留学生」を募集している。移住者の住居として、空き家になった一軒家を仲介する。 担当者は「豊かな自然や島民とのふれあい、島っ子ガイドを通した独自の教育を体験してもらいたい」と呼びかけている。 問い合わせは「島っ子ガイド留学事務局」のメール(suga.nagi.0004@gmail.com)へ。