癒やしの音色を“触覚”で感じてメンタルヘルスに 名古屋大などのチームが臨床研究
触覚が秘める可能性
低周波は一方で「公害」として問題になることもあります。 鈴木准教授によると、工事現場の重機や工場などから出る人工の低周波は強さと成分が一定で、長く接すると不快感につながるといいます。「例えば滝の音は一定のように聞こえるけれど、気分が悪くなる人はいないはずです。自然の低周波には様々な成分が含まれて常に変化し、人工の低周波とは明らかに違います」 自然の低周波を触覚で感じることは、メンタルヘルス以外にも様々な効果があるのではないかと、鈴木准教授は考えています。 高齢者施設の協力を得て、施設の廊下に40ヘルツの低周波を環境音とともに流したところ、バラバラの単語を覚える「作業記憶」や情報処理の力の改善がみられたといいます。また、マウスによる実験では、血圧の正常化や、糖尿病にかかわる糖代謝の改善もみられたそうです。 人間は日常的に握手をしたり抱き合ったりしてスキンシップをしているほか、ペットと触れ合うことなどで心を癒しています。鈴木准教授は、昆虫の繁殖や植物の生長、さらにはウイルスや細胞の活動でも広い意味での触覚が重要な役割を果たしているといいます。 触覚は、まだ私たちが気づいていない可能性を秘めているのかも知れません。 (メ~テレ・山吉健太郎)