古川琴音「逃げて、叫んで、怒って、泣いて」演じた日本ホラーの新たな傑作『みなに幸あれ』で知った“幸せは誰かの不幸の上に成り立っている”恐怖
日本で唯一のホラーにしぼったフィルムコンペティション、「日本ホラー映画大賞」の第一回受賞作を長編として映画化した下津優太監督の『みなに幸あれ』で主演を務めた古川琴音。話題作への出演が相次ぐ実力派俳優を突き動かす、ホラー映画への愛と仕事への好奇心に迫った。 【画像多数】アンニュイな役が多い、古川琴音さんの叫びまくりなヤバすぎる姿!
見たくないのに見てしまうホラー映画の中毒性
──ベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した『偶然と想像』(2021)やNetflixで配信中の『幽☆遊☆白書』(2023)、大河ドラマ『どうする家康』(2023)など、話題作に多数出演されていますね。ジャンルも役柄も本当に幅広いと感じますが、作品選びにこだわりはありますか? 古川琴音(以下、同) 自分の興味が湧くものや、演じるイメージが湧くものだけだとどうしても偏ってしまうので、より広い視野で選べるよう、事務所が薦めてくれる作品にもチャレンジしています。だから今まで演じてきた役に、あまり偏りがないのかもしれません。 ──映画『みなに幸あれ』(2024)では初めてホラーに挑戦されました。この作品は演じるイメージができたのでしょうか? はい。今回は役名が「孫」だったので、自分もハマるけど、違う人が演じてもきっとハマったはず。みんなに共通する普遍性のある役柄を任されたことはありがたかったです。それと、ホラー映画はよく見ていたので、お話をいただいたときは純粋にうれしかったですね。 ──ホラーは好き嫌いがわかれるジャンルだと思います。古川さんが惹かれる理由は? わからないことや不思議なこと、理解できないことが怖さにつながると思っていて。その刺激は中毒性があるし、見たくないのになぜか見てしまう。好奇心が止まらない感じが好きなんです。 今思い浮かぶ好きなホラーは『パラノーマル・アクティビティ』(2007)、『コンジアム』(2018)、『呪怨』(2002)……。人が人じゃない動きをしている作品や、理解できない内容の作品が怖いですね。 ──『みなに幸あれ』は、「誰かの不幸の上に誰かの幸せが成り立っている」ことをテーマにした物語です。この作品に感じた怖さは? 必ずしもフィクションと言いきれない部分です。それこそ昔の日本でも生贄を供える文化があったというし、私たちの生活を支える畜産だってそう。普通に暮らしていたら見えないだけで、見ようとすればいくらでも映画のテーマに通じる現実はあると思います。 『みなに幸あれ』というタイトルがすごく皮肉で意地悪だと思いましたし、今までにないホラー映画になると思いました。