Number_i全米チャート入り!キンプリからの劇的すぎるイメチェンが生んだ過去との断絶の背景
劇的な変化はキンプリ時代と決定的な断絶を生んだ
ご存知の通り、旧ジャニーズ事務所をめぐっては大きな問題がありました。社会を揺るがせたニュースと、所属タレントたちの独特なパフォーマンスとの間には決して薄くない関係があったと多くの人が考えています。 そのために、新会社での作風が前事務所でのそれと同じであってはならないとのドグマがあったとしても不思議ではありません。 そして、「GOAT」は見事にそれを達成しました。旧ジャニーズ事務所では絶対に作れなかった、同時代的なかっこいい音楽です。 しかし、ツッコミどころを消して世界基準に合わせるほどに、旧ジャニーズのやっていたことがいかにユニークだったかが浮かび上がってしまう。皮肉なことに、「GOAT」はそのことも証明してしまっているのですね。 劇的な変化は決定的な断絶を生みました。Number_iにとってキンプリという過去は存在しないものになってしまったのです。「GOAT」は、そう宣言している曲なのです。
確かにかっこいいが過去を否定しているのでは
もちろん、年齢を重ねたアイドルは表現の方法や作風を変えていきます。海外で言えば、ロビー・ウィリアムス、ブリトニー・スピアーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、マイリー・サイラス、ジャスティン・ビーバー、ワン・ダイレクションなどなど、みんなデビュー当時とは違った音楽をしています。 けれども、それはあくまでも段階的に、です。自らの持ち味を保ちつつ、少しずつオプションを加えていき、出来ることの範囲を広げていくのですね。だから、息の長いキャリアを歩めるのです。 それを踏まえて、「シンデレラガール」と「GOAT」をどう考えたらいいのでしょうか? 筆者には、変化、成長というよりも、むしろ過去を急速かつ執拗に反転させているだけだと感じました。 かっこいい。確かにかっこいいのだけれど、その根拠となっているものが否定的なエネルギーなのではないかということですね。 変えなければならないやむにやまれぬ事情があったのは理解できます。しかし、言葉はきつくなりますが、どうしてもただ服を着せ替えただけに見えてしまう。
キンプリとの間の溝を埋めることに期待
とはいえ、今年の元旦にデビューしたばかり。モダンで硬派なパフォーマンスをこなせることは十二分に証明してくれました。 となると、今度はキンプリとの間の大きな溝を埋めるものを期待したいところです。 その甘さが配合されたとき、Number_iは確かなアイデンティティを手にするのでしょう。 <文/石黒隆之> 【石黒隆之】 音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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