キャバクラ嬢がもらう「チップ」や「プレゼント」は課税されないのか? インボイス制度導入で変わる“売れっ子”の基準と必要経費の落とし方
チップやプレゼントは課税される?
そして、キャバクラ嬢には、店の報酬以外に非公式の収入がある。気前のいい客からもらうチップやプレゼントだ。気になるのは、この臨時収入に税金がかかるのかどうか。風俗業・キャバクラ・ホストクラブといった夜職の案件を取り扱う税理士法人松本に見解を聞いた。 「客から直接もらった金銭や物品は、建前としては見返りを求めるものではないため、原則として贈与税の対象になります」 贈与税は個人から財産をもらった際にかかる税金で、受け取った人が申告を行なう必要がある。例えば、650万円分のプレゼントを受け取った場合、贈与税は97万円ほどになる。ちなみに、年間110万円以下の場合は贈与税がかからないが、合計額で計算されるので、複数人からプレゼントをもらう人気嬢であればあっさり超えてしまうだろう。 ここで問題になるのが、プレゼントの売却である。何人もの客を相手に、あらかじめ欲しいバッグやアクセサリーを指定してプレゼントを受けとり、ひとつだけ手元に残してほかはすべて売り払ってしまう。そうすれば、どの客にも「プレゼントありがとう」とアピールできるからだ。 キャバクラ嬢のこの常套手段はかなり問題がある、と税理士法人松本は指摘する。 「客からもらった高額なバッグやアクセサリーを売却した場合、所得税が課される可能性があります。また、売り先は質屋やオークションサイトが挙げられると思いますが、質屋の場合はその場で現金を受け取れるので、その即金性の高さから人気があります。 即金性はなくとも、売値を少しでも上げたいのであれば、オークションサイトのほうが適しているとも言えます。ただし、オークションサイトの場合、売却代金は『振込』となるので通帳に記録が残ります。自身でしっかり申告するか、専門家に相談することをおすすめします」
美容整形は経費になるのか?
キャバクラ嬢は個人事業者であることが多いので、当然ながら経費は発生する。経費として認められる代表的なものを以下にまとめてみた。 衣装代……キャバクラでの勤務に必要なドレスやアクセサリーなどの衣装代 美容関連費……ヘアスタイル、ネイル、メイクアップなどの美容費用 交通費……タクシーなど仕事への通勤にかかる交通費 携帯電話代……顧客との連絡に使用する携帯電話の料金 名刺代……顧客へ渡すためだけに使う営業用アイテム 接待費……顧客を接待するための飲食代 教育費・研究費……コミュニケーションスキルや接客技術を学ぶためのセミナー、講習会の受講料 「キャバクラ嬢という職業は、売上を上げるためには外見や仕草、接客コミュニケーションスキルへの投資が必要である」ということが合理的に判断されていることがわかる。 美容関連費が経費として計上できるのもキャバクラ嬢ならではだが、彼女たちの中には美容整形によって美しさを手にする女性も数多くいる。果たして、美容整形は経費になるのだろうか? ルッキズムが叫ばれる世の中ではあるが、キャバクラではいまだに美人であれば指名が増えて人気も出る。そんな彼女たちが美容整形をするのは、必要経費に当たるのでは? 実際、数人のキャバクラ嬢に話を聞いてみると、「整形してきたんですよ」「W先生?」「当然ですよ」と、病院ではなく執刀医の名前を挙げて整形談義に花を咲かせるほど、実にあっけらかんとしていた。 そうなってくるとやはり経費として認められそうな気もするが、現実は、美容整形が経費として認められる可能性は極めて低いという。裁判で美容整形の経費性を争った事例もあるが、キャバクラ嬢の主張は通らず、美容整形は経費として認められなかった。税理士法人松本の見解は以下の通りだ。 「美容整形の効果がキャバクラ嬢という職業に留まらないからです。女性が美しくありたいのは当然ですが、『事業を辞めたとしても、美容整形した顔を元に戻すわけではない』と税務署が指摘し、キャバクラ嬢の美容整形費用に合理性はないと判断したケースがあるのです」