【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話007「成功と失敗は裏表」
005「BARKS最大の黒歴史」という4月17日に書いたコラムで、BARKSでコミュニティー機能を搭載し、音楽好きが集う素晴らしい交流の場が実現したことを記した。ちょうどmixiも活況だった頃だ。BARKS内でも多くのページビューを創出し、音楽ファンが自由にアーティストの魅力を語り、好きな音楽をリコメンドし、その思いを皆と共有するという理想的な環境がうごめいていた。もちろんレーベルもこの動きを応援してくれていたし、ある時はアーティスト本人が降臨するというサプライズで、狂乱の様を呈していた。 005「BARKS最大の黒歴史」 そんな優れたサービスをなぜ閉じたのか。 時代の推移とともに、クローズドなコミュニティからSNSへトレンドが移っていき始めそうなタイミングだったかもしれない。活況が故にサーバー負荷が大きくコスト的に立ち行かなくなりつつあるという現実もあった。でも実は、直接的な原因は全く別なところにあった。 それは、「東方神起の人気ありすぎ問題」だ。 もちろん東方神起に罪はないし、トンペンさん(当時、東方神起のファンのことをこう呼んでいた)にも咎められることはなにもない。もちろん、盛り上げてもらって大感激だった。実際とても嬉しかったし、とても感謝していた。充実度100%だった。 でも人気がありすぎて、そのうちBARKS内のコミュニティ・スレッドのTOP10は常に東方神起ネタになった。同じ時期にして絶大なる人気と勢いを誇っていたアヴリル・ラヴィーンやバンプ・オブ・チキンも非常に活況だったものの、ファン層の違いなのかトンペンさんの書き込む量とスピードは、他のアーティストの書き込みを遥かに凌駕した。 結果、BARKSは「東方神起メディア」と揶揄された。嬉しいけどやめて。誇らしいけどやめて。悔しいからやめて。我々が最も重要視していた中立性とか客観性とか公平さを自らぶっ壊すことになった。同時にアーティストパワーの凄まじさをまざまざと見せつけられたけれど。アーティストとファンが集結すれば、メディアのバランスなんて簡単に傾いてしまうんだ。 今思えば、身の丈じゃないものにまで育ったということなのだろう。成長したとは言いがたい。植物であれば変に徒長してしまったというやつだ。過ぎたるは及ばざるが如し。大事なのはバランスだ。 期せずして、BARKS黒歴史の一端をまた露呈させてしまったけど、ま、いいか。 文◎BARKS 烏丸哲也
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