元タカラジェンヌ「カリカリ梅の老舗メーカー6代目を継ぐ」あこがれの宝塚を辞めてまで
想像するだけで身体にぽっかり穴が空くようなさみしさを感じました。小さいころからの思い出とともに、会社にすごく愛着があったんです。 一方で宝塚歌劇団の男役は、10年経験して1人前と言われています。そのとき私は入団5年目。まさにこれからの時期で、宝塚でまだまだ頑張るつもりでした。 それでも、実家に帰って赤城フーズを継ぐのと宝塚歌劇団に所属しつづけるのと、どちらが後悔しないか?と自問自答したら、「家業を継ごう」と答えが出てきました。
── 家族や会社への思いが強かったのですね。 遠山さん:そうなんです。家族が応援してくれたからこそ、4回も受験に挑戦できました。入団後もずっと支えてくれていました。経営のことは何もわからないけれど、やろうと思えた私が帰ることで、少しでも役に立てるのではないかと、これから一生懸命勉強しようと思いました。 祖父は喜んでくれた記憶があるのですが、両親がどんな反応だったかはあまり覚えていないんです。きょうだいたちからは、「宝塚歌劇団でこれからというタイミングなのに、本当にいいの?」という心配の言葉をもらいました。
2005年4月3日に宝塚歌劇団を退団し、同月21日には赤城フーズに入社しました。とにかく飛び込んでみよう!という決断でしたが、宝塚の受験から退団までを通して「努力を続けたら、いつかきっと結果が出る」と実体験できたことが、私を支えてくれました。当時の経験はすべて、私にとってかけがえのない財産です。 PROFILE 遠山昌子さん 群馬県前橋市生まれ。2000年、宝塚歌劇団に男役「遥海おおら」として入団。2005年、宝塚歌劇団を退団し、赤城フーズ株式会社に入社。2008年に結婚し、2児の母に。2018年2月、6代目として代表取締役社長に就任。
取材・文/齋田多恵 写真提供/遠山昌子
齋田 多恵