アジア初、美しい海の国際認証「ブルーフラッグ」を取得したビーチはどこ?
3つ目の「安心して楽しめる海」であるためには、ライフセーバーの存在も必須条件である。現在70名のメンバーを抱える若狭和田ライフセービングクラブも推進部会に加わった。その一人、若狭の海の美しさに憧れて奈良県から移住してきたという山本裕紀子さんは、全日本ライフセービング大会で昨年、今年と2年続けて種目別チャンピオンに。 「日本一になったので、次は世界一を目指そうとトレーニングに励んでいます。そんな姿を間近に見てもらうことで、自分もライフセーバーになりたいと思う子供たちが増えてくれると嬉しいですね。人を助けるだけがライフセーバーではありません。事故を未然に防ぐというのがライフセービング活動の大きな目的で、遊びにくる一人ひとりが安全に関する知識をしっかり身につけていくことが重要なんです」(山本さん)
美しい海を子や孫の世代に
同じクラブに所属する須藤竜之介さんも県外(千葉県)からの移住者だ。現在は若狭高浜観光協会に勤務し、外国人観光客の誘致などを進める。「海外からの旅行者は京都あたりまでは来ますが、その先にある若狭まではなかなか足を伸ばしてくれません」と須藤さん。「ブルーフラッグが立ったことで、若狭にこんな素晴らしい海があることを知っていただくきっかけにできれば」と今後の活動に意欲を燃やす。 和田で生まれ和田で育ったという和田公民館の館長、村宮博明さんは、地元の海への思いが人一倍強い。海の生き物を観察する子供向けの勉強会などを通じて、ブルーフラッグ取得の4つ目の項目である「いろんなことが学べる海」の実現に貢献してきた。
「高度成長期の和田ビーチには1シーズンに70万人、80万人の海水浴客が来ていましたが、いまは激減して20万人を切ってしまっています。当時は200軒あった民宿も4分の1になりました」と話す村宮さん。「ですが、地元の人たちの“海を大切に守りたい”と思う気持ちは昔もいまも変わりません。美しい海を子や孫の世代に残したい。その願いは、多くの人たちに受け継がれています」
ブルーフラッグの認定期間は1年間。大切なのは継続していくことであり、毎年審査に合格していかなければならない。村宮さんといっしょに、ビーチに出てみた。 白い砂浜の先に遠浅の海がつづき、湾の向こうには“若狭富士”の異名をもつ青葉山が見える。そこに夕日が沈んでいくシーンは、この世のものとは思えない美しさだ。オレンジ色に染まる海を眺めながら「ブルーフラッグの取得で、自分たちの海を守る運動がさらに活発化することを願っています」と言う村宮さん。頭上では、青い旗が海風にやさしくなびいていた。 文=秋本俊二(作家) 写真/映像=倉谷清文