野球人生の窮地にあるアスレチックスの中島
開幕から18勝10敗でアリーグ勝率1位と快調なアスレチックスが、2日、レッドソックス戦のため、敵地・フェンウェイパークに乗り込んで来た。試合前、メディアに対応したア軍のメルビン監督には、開幕から大活躍しているジェド・ラウリー遊撃手に関する質問が飛んだ。なぜなら、彼は、元レッドソックスで、ボストンの番記者が、移籍後のブレイクを話題にしていたからだった。 「ラウリーを獲得に至った経緯について、話してもらえますか?」と米国人記者が訊ねた後、メルビン監督の口から出てきたのが、中島裕之選手の名前だった。 「我々は、2012年のオフに中島を獲得していたからね。だから、控えとして、守備範囲の広い彼を獲得したんだ。しかしながら、我々は彼の耐久面を懸念していた。それが、去年もシーズンを通して活躍し、今年は、出塁率や打点でも成績を上げている。チームが4月にいいスタートを切れたのも、彼の貢献は大きかった。今となっては、幸運にも我々は、彼を獲得しておいてよかったと思う」 2012年の12月。アスレチックスが、正遊撃手として、総額650万ドル(約6億5000万円)の2年契約プラス出来高(3年目は年俸550万ドルの球団のオプション)という好待遇を持って獲得したのが、中島だった。ア軍は、年を改めた2月のキャンプ直前に、アストロズと4-2の交換トレードで、ラウリーを獲得した。 メルビン監督が、この日、改めて明かしたように、今をときめくラウリーは、事実上、中島の”保険”として獲得された控え遊撃手だったのだ。 レッドソックス時代は、相次ぐ故障や疾患などで戦列離脱することが多かったラウリーは、この日の試合前の時点で、出塁率・423(リーグ3位)、四球20(リーグ4位)と大活躍。不動の二番打者に定着している。メルビン監督が、ラウリーのここまでの活躍を訥々と語り続ける程に、明暗を分けた形の中島の立場は、対照的に映る。 中島は、昨年8月には、メジャーの40人枠を外れ、2年目の今季はマイナーキャンプでスタートした。オープン戦は6試合に出場して6打数2安打。開幕は傘下の3Aサクラメントで迎えたが、自打球を左膝に当てて故障者リストに入るなど、調子が上がらないまま。ついに、投手ロドリゲスの3A昇格に押し出される形で、打率・128の中島は、先月30日に、2Aミッドランドに降格してしまった。これで、海を渡って以来、いまだ踏むことのないメジャーの球場が、また遠ざかってしまった格好だ。