杉咲花、フジ系連ドラ初主演でさらなる難役へ。“頭ひとつ抜けた”どころではないとわかる直近3作品
杉咲花が主演を務める、同名漫画を原作としたドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が、2024年4月より放送開始となる。演じるのは「過去2年間の記憶がなく、さらに今日のことも明日にはすべて忘れてしまう」という記憶障害を抱えた脳外科医だ。 【画像】多層性のあるキャラクターを体現できる杉咲花 設定からして難役だと思えるが、直近の杉咲花は、もはや俳優として凄まじい領域へと到達しており、さらなる跳躍も期待できる。 近年の映画3作品で、いい意味で単純な解釈に落ち着かせてくれない、多層的な内面が伺える、なんなら本気で恐怖を覚えるようなキャラクターを、鬼気迫るという表現でも足りないほどに演じ切っていたのだ。一挙に紹介しよう。
『法廷遊戯』での“無表情”の中の演技
映画『法廷遊戯』(2023)は、同名小説を映画化した法廷ミステリーだ。杉咲花が演じるのは「血の付いたナイフを持ったまま親友の遺体のそばにいた」女性であり、それを目撃したのが永瀬廉扮する幼馴染で弁護士の主人公。そこから、二転三転する事態を経て、苛烈な過去と真実が浮かびあがっていく、いわゆる「どんでん返し」系の話運びが大きな魅力となっている。 同作での杉咲花は主人公だけでなく観客にとっても「真意がわからない」キャラクターであり、劇中の多くで無表情に近い表情でありながらも、「何かを考えているような」印象も同居させている。 ネタバレになるので詳細は伏せておくが、終盤では杉咲花というその人さえも、もはや恐ろしい存在とさえ映る、とてつもない演技をしていた。人によっては過剰にも感じてしまうかもしれないが、「この役にはこれほどの狂気的な表現が必要だった」と、個人的には大いに納得できた。
悲劇的な過去を持つ主人公を演じた『市子』
映画『市子』(2023)は「プロポーズをした恋人が、なぜか翌日に姿を消してしまう」ことから始まるミステリードラマで、大きな特徴は時系列が激しくシャッフルする作劇。それはいたずらに複雑にしているわけではなく、「断片的にひとりの女性の謎めいた過去を知っていく」様が劇中の登場人物と一致しており、まるでパズルを解いていくような面白さにもつながっていた。 杉咲花扮する女性の過去は悲劇的ではあるが、ただ「かわいそう」な印象だけを持たせない。時には「自分の信じているもののために行動する」精神的な強さを感じさせる一方で、別の場面では「何かを諦めている」ような表情を浮かべていたり、さらに別の場面では「恐ろしい選択ができてしまう」危うさをも表現していたのだから。 そして、若葉竜也演じる青年といる場面は、わずかな時間だけでも、どこにでもいる普通のカップルに見える、幸せな日々があったと思えることが、より切ない。 その若葉竜也はドラマ『アンメット』で杉咲花との再共演を果たし、そちらではマイペースな言動で彼女を導く存在となるそうだ。『市子』はAmazonプライムビデオで2024年3月8日より見放題配信となる。