国はコメの需要をつくる活動に注力すべきだ…新米価格高騰「反動が出れば農家の収入が減ってしまう」
JA福岡中央会・乗富幸雄会長(73)
今年春からのコメ不足を受けて新米価格が高騰しているが、来年以降が心配だ。農林水産省の2024年7月~25年6月の需要見通しは674万トンで、前年同期より31万トン減少すると予想している。過去の統計からみても価格高騰の翌年は需要が急減し、相場も大きく下がってしまう。 【動画・食料安保を問う】第4部 備え(1)コメの輸出
すし店が1貫当たりのシャリの量を減らすなど、業務用のコメ使用量が削減されているという話が聞こえてきている。価格高騰の反動が出れば結局、また農家の収入が減ってしまう。
今回のコメ不足は、国による事実上の生産調整が続いている中で起こった。私を含め、コメ農家は本当はもっとコメを作りたい。国は生産を減らすことに力を使うのではなく、需要をつくる活動に注力すべきだ。輸出の拡大はその一環だ。
JAとしても反省がある。コメ農家は大半が赤字ということをもっと消費者に理解してもらい、生産コストに見合った価格で売れるように取り組まなければならなかった。コメに限らず、農産品を1円でも高く売れるように流通段階からできることに取り組みたい。
農業の最大の課題は後継者難だ。新規参入を増やすためにも、利益をしっかり出せてやりがいのある環境をつくっていきたい。(聞き手・川口尚樹)
◆JA福岡中央会=福岡県内の20JAや連合会などでつくるJA福岡グループ(組合員計約35万人)を代表し、農業政策への意見のとりまとめなどを行う。乗富氏はJAみなみ筑後(本店・福岡県みやま市)出身。