“アカデミー女優”松岡茉優が話題作『ゆりあ先生の赤い糸』に“脇役”でも「出演したかったワケ」
菅野美穂主演の話題作『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系)。回を追うごとに“ゆりあ”(菅野)と松岡茉優演じる“みちる”の手に汗握るやりとりに、心を鷲掴みされた視聴者が続出している。 【すごい…写真あり】松岡茉優&有岡大貴 外デート厳禁で「ひとつ屋根の下」で暮らす このドラマは、’23年「手塚治虫文化賞」大賞を受賞した入江喜和の同名漫画が原作。要介護状態となった夫の吾良(田中哲司)に彼氏の稟久(鈴鹿央士)、彼女のみちる(松岡茉優)と隠し子らしき姉妹が発覚。奇妙な共同生活をスタートさせる“ひとつ屋根の下”のヒューマンドラマだ。 介護や不倫、嫁姑、性的少数者、DVなど様々な問題を抱えながら家族のあり方を問う、今クールでも注目の問題作である。 第7話では、吾良の妹・志生里(宮澤エマ)から嫌味を言われ出て行ったものの、行き場を失い公園で座り込んでいるみちるたち親子を連れ戻すゆりあ。 みちるは、改めて夫の嘘と暴力に悩まされた過去。そして下の娘が吾良の子供ではないことも打ち明ける。だがここから先の“恋バナ”こそ、第7話の見せ場となった。 「年下の恋人・優弥(木戸大聖)に対して、身を引こうか悩んでいるゆりあに『だっさ』と呟くみちる。『他人のために行動するゆりあが、自分自身のことになると逃げ腰』『自分の人生を引き受けようとしない!!』と訴えるシーンには、ネット民も大興奮。GP帯でも主役を張る松岡の女優魂が、今作でも存分に発揮されている」(制作会社プロデューサー) 第8話でも、優弥とのことで逡巡していると無言の圧をかけ、ゆりあが、 「え、なに?」 と聞き返すと、 「うん、またいつもの癖なのかなって」 と言って、しばしジャブを打ち合う2人。一緒にお茶をすする間合いがあって、 優弥から結婚を切り出されたことを聞きだすと、 「嬉しい」 と言って、みちるは涙を拭う。2人のさり気なくも絶妙な演技合戦は、見応え十分といっていい。 映画『桐島、部活やめるってよ』(’12年)での高い演技力に注目が集まった松岡は、映画『ちはやふる』シリーズの“孤高のクイーン”、映画『勝手にふるえてろ』(’17年)では“最上級のこじらせ女子”を演じて、これまで日本アカデミー賞優秀主演女優賞を三度受賞。さらに是枝裕和監督の『万引き家族』(’18年)では、複雑で多面的なキャラクターを絶妙のバランスで演じ切り、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した。 今年も7月期のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に◼された』(日本テレビ系)、映画『愛にイナズマ』に主演。今や最も注目される女優の1人といっても過言ではない。そんな彼女が主演作でもない今作になぜ、出演したのか。疑問が残るところだ。 「元々、大の漫画好き。今作も事前に読んでおり、『まさか自分にみちるさんの役でオファーをいただけるとは思ってもいませんでした』とコメントしています。 今まで演じたことのないキャラを演じることは、“幅広い役を演じられることが持ち味”と称する松岡にとっては魅力的な役どころ。やらない選択肢はなかったはず」(前出・プロデューサー) そんな彼女が“女優”になるきっかけとなったのが、偶然TSUTAYAで借りて観た三谷幸喜監督の映画『ラヂオの時間』と是枝監督の映画『ワンダフルライフ』だという。 「その当時、芝居のレッスンにも参加していましたが、『自分は、お芝居が苦手』。そう思い込んで“お芝居が好き”という気持ちに蓋をしていたと話す松岡。その2作を観てから『自分の下手さと向き合うことができるようになった』と自著の中でも告白しています」(前出・ワイドショー関係者) それ以来、この2人の作品に出演することを目標に頑張ってきた松岡。’16年には三谷が脚本を務めた大河ドラマ『真田丸』(NHK)に主人公・真田信繁(堺雅人)の嫉妬深い正室・春役で爪痕を残すと、“三谷喜劇”の舞台にも出演。 さらに是枝監督の映画『万引き家族』では、圧巻の演技を披露。演技派女優の仲間入りを果たしている。しかし、彼女の夢は、まだ叶ってはいない。 「お二人が作品を作ろうと思って地図を広げた時、『ああ、松岡茉優がいる』とピンを刺してもらえる俳優になりたい。うまいとか下手だけでなく、面白いと思ってもらえる存在になりたい。私、50代ぐらいがすごく面白くなる予定なので、お二人には長生きしていただきたいです」 そう語る、松岡茉優。ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』で、今まで演じたことのない役どころをまたひとつ手中に収め、次なる獲物を追い求める彼女の姿こそ、狩人そのもの。あの虚を突かれたような目は今、一体何を見つめているのか……。 その答えを知りたいのは、私だけではあるまい――。 文:島右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中
FRIDAYデジタル