「夕飯の支度はいいから早く寝ろよ」…妻を気遣う最後の電話から15年、タクシー運転手強盗殺人は未解決のまま進展なく
新潟市東区空港西で2009年11月、タクシー運転手阿部次男さん(当時63歳)が車内で刺殺されて売上金を奪われた強盗殺人事件は1日、未解決のまま発生から15年となった。最愛の夫を亡くした阿部さんの妻は現場付近の路上に花を手向け、夫の同僚らとともに事件の早期解決を願った。 【写真】事件が起きた現場の近くでは、昨年も献花が行われた
「もう少し待っていてね。必ずいい答えが出るように私も頑張るから。もうちょっと頑張って」
阿部さんの妻はこの日、現場付近に置かれた夫の遺影を前に、黄や紫色の花束を供え、手を合わせた。
夫との最後の会話は事件当日。普段は仕事中に電話をかけてくることはなかったが、突然「何してた?」と電話があった。少し具合が悪いことを伝えると、「夕飯の支度はいいから、早く寝ろよ」と体調を気遣う言葉があったという。「彼はもっとしゃべったのかな。『じゃあね』って簡単な電話だった」と言葉を絞り出す。
15年という長い月日が経過し、阿部さんの妻は事件が解決するのか、心配な気持ちが募ることが増えた。「不安な気持ちと負けないようにという複雑な気持ち」と心境を吐露する。
阿部さんが勤務していたタクシー会社元社長の男性(77)も遺影を前に「あなたのことはいつも心の中に大事にしまっているよ」と語りかけた。
阿部さんの働きぶりを、「5本の指に入る優秀なドライバー。見本のような男だった」と振り返る男性。進展がないことに「もう15年たったのかと、犯人が見つからないことにむなしい気持ち。申し訳ない思いでいっぱいだ」と唇をかんだ。
県警チラシ配布
新潟県警はこの日、現場付近と阿部さんが犯人の男を乗せたとみられるJR新潟駅で情報提供を求めるチラシを配り、事件解決への協力を訴えた。県警は現在も55人態勢で捜査を続け、男の行方を追っている。
男は身長約1メートル65のやせ形。県警は動画投稿サイトで犯人とみられる男の動画を公開している。有力な情報の提供者には最高300万円の捜査特別報奨金が支払われる。
県警捜査1課の阿部昭課長は「断片的、不確実な情報でもいい。情報を寄せていただいて、何とか被疑者の検挙に結びつけたい」と呼びかけた。情報は捜査本部(0120・39・1105)。