傘がない(7月18日)
県内の梅雨明けはまだか。天気予報には、来週にかけて曇りマークが並ぶ。油断ならない。上がったら、また降り出す。「傘がない」。井上陽水さんの往年の名曲が浮かぶ▼テレビでは国の将来を論じている。だが、問題なのは傘がないことだという。発表されたのは52年前。連合赤軍による「あさま山荘事件」が起きた年だ。学生運動の熱はさめていく。若者の関心は政治のあり方から、自らの心の内や身近な世界に向かった▼トランプ前米大統領を狙った銃撃事件に、世界は震えた。20歳の容疑者の男は射殺され、動機はやぶの中だ。成績は優秀だったが、友人は少なく、いじめを受けていたとも報じられる。一体何が凶行に走らせたのだろう。だれかが傘を差してあげていれば…。孤独でさめた心象が浮かんでくる。4カ月後に迫った決戦へ、どんな風が起きるのか▼「いかなる代償も払い、重荷も負う」。ケネディ大統領は就任演説で、友好国への支援を約束した。その威光は今や昔の感がある。「自国第一」とされるトランプ氏が返り咲けば、同胞との決裂も。大国の傘がなくなれば、わが国の行方はいずこに。陽水さんは歌う。♪つめたい雨が今日は心に浸みる―。<2024・7・18>