28時間かけて市民が突破した警察の車壁…トラクターデモ隊、大統領官邸へ=韓国
「尹錫悦(ユン・ソクヨル)は官邸から退き、警察は(バリケードの)車をどけろ!」 尹錫悦大統領の逮捕と拘束を求め、トラクター上京デモに出た「チョン・ボンジュン闘争団」(チョン・ボンジュンは東学農民戦争の主要人物)が、京畿道果川市(クァチョンシ)の南泰嶺(ナムテリョン)峠で警察に阻まれ対峙を継続してから丸一日が過ぎた22日。トラクターに乗ってデモに繰り出した農業者たちを応援するために、市民たちが続々と集まった。彼らの叫びはいつのまにか熱い歓声へと変わった。警察は28時間以上にわたる対峙の末、ソウル漢南洞(ハンナムドン)の大統領官邸に向かう道を開いた。 全国農民会総連盟(全農)、全国女性農民会総連合(全女農)らが集まったチョン・ボンジュン闘争団は、今月16日から全羅南道と慶尚南道でトラクター行進を始め、21日正午ごろ、南泰嶺に到着した。彼らの最終目的地は尹大統領の官邸だったが、ソウル地下鉄4号線の南泰嶺駅近くの道路の全車線を統制した警察の車壁に阻まれ、徹夜の座り込みを行った。 この日闘争団が南泰嶺峠を無事に越えたのは、「道が開かれるまで」街頭で声援を送った市民たちのおかげだった。警察に圧力を加えるために集まった市民たちは、21日午後から「即席集会」を開いた。氷点下11度の寒波の中でも、市民たちはK-POPと「農民歌」を交互に歌い、長い冬至の夜を耐えた。現場に来られなかった人たちは、温かい食べ物などの出前や防寒用品、飲み物などを送った。市民の連帯の行列は一晩中増え、8車線を埋め尽くし、同日午後には3万人(全農推算)に達した。同日午後4時40分頃、ついに警察が車壁を取り払って道が開かれると、市民たちは「勝った!万歳!」と歓声をあげ、歌を歌いながら行進を続けた。 これまであまり大衆の関心が集まらなかった農民運動と市民の熱い連帯が実現した背景には「ソーシャルメディアの力」がある。前日昼、警察がトラクターの運転者を強制的に引きずり下ろし、強硬鎮圧する動画がX(旧ツイッター)にシェアされ、多くの市民の怒りを招いたのだ。すでに14日、ソウル汝矣島集会における全農の「喪輿闘争」を始め、最近ある女性農業者がXでシェアする全農ニュースが若いネットユーザーたちの注目の的になってきたところだった。闘争団が上京するというニュースを聞いた市民たちが、ペンライトを持って南泰嶺まで「お迎え」に出たのは、それほど不思議なことではなかった。 この日、連帯した市民たちとと農業者たちは互いを励ました。キム・ウンジンさん(60)は「若者たちが最も大切な物であるペンライトを持って集会に出るように、農業者たちも自分の最も貴重な農機械であるトラクターとともに上京した」とし、「トラクターデモは意思表現の一つの方法に過ぎず、不法を犯したのは非常戒厳を宣布した尹大統領の方」だと語った。発言台に上がったある女性農業者は「農村暮らしで時には寂しさを感じたこともあったが、今日集まった市民たちを見て元気をもらった。健康な食べ物は、農業者が責任を持って提供する」と叫んだ。市民たちは「農業者最高!」と声援を送った。 突破は不可能と思われた壁を取り払って道を開いたトラクター13台が、同日午後6時45分、ソウル漢江鎮(ハンガンジン)駅付近に姿を現すと、歓声が上がった。大統領官邸近くでトラクターの行列を待ちながら集会を開いていた1万人余り(主催側推算)の市民たちは「国民が勝った! 農業者が勝った!」と叫んだ。各々に用意したペンライトを振り、ペンライトがない人たちは親指を立てて見せた。歌手シン・ヘチョルの曲「あなたへ」に合わせて飛び跳ねたりもした。京畿道高陽市(コヤンシ)から来たオ・ミンソさん(22)は、「人が集まり増え続けたことで壁が崩れるのを見て、『民主主義がまた勝利した』と思った」と語った。 至難な対峙の過程で、チョン・ボンジュン闘争団を守ろうとする政界と市民社会の動きも大きな後押しになった。共に民主党、祖国革新党、進歩党など野党議員が現場を訪ねて警察と交渉に乗り出し、尹錫悦退陣非常行動は国家人権委員会に緊急救済を申し入れた。この日警察庁国家捜査本部には、トラクター行列を阻んだソウル方背(パンベ)警察署長を職権乱用の疑いで処罰せよという告発状も届けられた。 パク・コウン、キム・ガユン、チョン・ボンビ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )