「波のように人が倒れ」…159人死亡の韓国・群衆なだれ事故「13万人に137人」超手薄な噴飯警備
警察幹部に実刑判決が下された。 ’22年10月29日に、ハロウィンにわく韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で起きた群衆のなだれ事故。159人が亡くなった前代未聞の惨事をめぐり2月14日、ソウル西部地裁は重大な決断をした。当時のソウル警察庁の部長A氏に、懲役1年6ヵ月の有罪判決を言い渡したのだ。 【これは人災…】事故の生々しく凄惨な現場&献花に訪れた「美人ファーストレディ」写真 「A氏は事故直後に、ハロウィンによる人の密集を指摘していた内部文書を削除するよう指示したとされます。裁判所はA氏の行動をこう断罪しました。『未曽有の人命被害が出たにもかかわらず、国民の期待を裏切った。警察としての責任を逃れ、事実を隠蔽しようとしたと思われる』と。梨泰院のなだれ事故で警察幹部に判決が出たのは初めてのことです」(韓国紙記者) 『FRIDAYデジタル』は’22年11月1日配信の記事で、韓国史に残る大事故について詳しく報じている。再録して、超手薄な噴飯警備などトラブルに至る背景を振り返りたい(内容は一部修正しています)ーー。 ◆「身体が浮き上がるほど超過密」 「押すな! 戻れ!」 「人がつぶれてしまう!」 繁華街を包んでいたハロウィンの楽し気な雰囲気が一転、死の恐怖に包まれた。 韓国ソウルの若者に人気のスポット梨泰院で大惨事が起きたのは、’22年10月29日夜10時過ぎだ。地下鉄駅近くの、幅3.2m、長さ40mの狭い道に群衆が殺到。身動きがとれなくなった人々が将棋倒しとなり、日本人2人を含む159人が命を落とした。 「現場は、身体が浮き上がるほどの超過密状態(1㎡に10人以上)だったようです。しかも傾斜10%の坂道で段差も多く、人が倒れやすい形状だったとか。危険な状態だったにもかかわらず、道には後から後から群衆が押し寄せてきました。波が崩れるように人が倒れ、さらに上から人間が覆いかぶさり、大勢の人が圧死したとみられます」(別の韓国紙記者) 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はスグに動く。迅速な救急治療体制を組むよう関係各所へ指示。10月30日未明には大統領府の危機管理センターに入り、「起きてはならない悲劇と惨事が現実となった」と最優先で事態にあたる姿勢を示した。 だが、背景には「過去の政権の二の舞になりたくない」という計算があるようだ。 「’14年4月に起き、300人以上の死者・行方不明者が出た大型旅客船『セウォル号』の事故です。当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、発生後約7時間にわたり音信不通となり現場は大混乱。初期対応の遅れで被害が大きくなったと、大きな批判を浴びたんです。一説には、親しい男性と密会していたとか。『セウォル号』事件は、朴政権退陣の一因となりました」(同前) 今回の事故も、尹大統領の致命傷になりかねない。新型コロナウイルスの影響で’20年以降ハロウィンイベントは自粛ムードだったが、’22年は3年ぶりに営業規制が緩和。韓国『KBSテレビ』によると、当日は13万人の群衆が梨泰院を訪れたにもかかわらず配備された警官はわずか137人だったという。 「しかも警備の目的は交通規制ではなく、酔っぱらいのケンカや盗撮の摘発だったようです。警備が超手薄となったのには、2つの理由があります。1つは、ここ数日近隣で反政府デモが多発していたこと。デモ対応に、人員が割かれていたようです。 2つ目が、尹大統領が’22年5月の就任とともに移転した大統領府です。新大統領府は、事故現場近くにあります。近年、北朝鮮との南北関係は緊張が続いている。双方が相手国トップの暗殺を示唆する『斬首作戦』を計画したため、警備は大統領府に偏りがちだったとか。その上、連日の夜勤で警察官も疲弊していたと聞いています」(同前) 尹政権は事故後、警備員を137人から10倍以上の約2000人に増員し事後処理にあたらせている。だが、この対応が国民の反発を招いているようだ。 「動員できるなら、なぜ最初から2000人で警備をさせなかったのかと。事故は、警備を疎かにしたことで起きた『人災』ではないかという批判です。事故前後の警備体制は、30%前後と超低空飛行を続ける尹政権の支持率をよく象徴しています。大統領府に警備を集中させ、民衆の命より自分たちの安全を優先させたんです。これでは国民が信頼するワケがありません」(同前) 警察幹部や尹大統領の責任は重い。
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