浜浦彩乃、内田未来、末満健一　撮影：藤田亜弓

　『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』Blu-ray＆DVD発売記念トークイベントが12月8日に東京都内で行われ、作・演出を手がけた末満健一、リリー役の内田未来、スノウ役の浜浦彩乃が出席した。 【写真】『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』トークイベントの様子 　2023年4月より上演された＜TRUMPシリーズ＞最新作となる本作。＜TRUMPシリーズ＞とは、劇作家の末満がライフワークとして掲げる舞台で、永遠の命を持つ原初の吸血種“トランプ”の伝説に翻弄される吸血種“ヴァンプ”を描いたゴシックファンタジーだ。 　『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』は、2014年の初演以降シリーズファンの間では伝説的な作品として根強い人気を誇る『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』を改稿し、深度を増した脚本と新たな楽曲を携えて上演された、TRUMPシリーズ15周年の幕開けを飾る作品。全キャストが2000通を超える応募の中から「演技力」「歌唱力」「役とのケミストリー」を重視した実力主義のオーディションで選出されたことも話題となった。 　イベントでは、末満、内田、浜浦の3人がピックアップした数シーンの映像を観ながらトーク。まず『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』の幕開けを飾る楽曲「Forget-me-not ～私を忘れないで～」、キャスト紹介を兼ねたパフォーマンス“キャストパレード”が披露されるナンバー「Eli, Eli, Lema Sabachthani?」の映像が上映された。末満は「衣裳と舞台装置、どちらも真っ白に統一すると照明の調整が大変なんです。それを『COCOON』で学んだんですけどね……『LILIUM』でまたやってしまいました！（笑）」と明かし、会場の笑いを誘った。 　続いて、内田と浜浦がそれぞれお気に入りのシーンを紹介。内田は、ファルス（大森未来衣）がリリー（内田未来）に壁ドンする場面を挙げ、「リリーは感情の起伏があまりないキャラクターですが、ファルスとわちゃわちゃ言い争いをしたり、ファルスにビンタをしたり（笑）、ここが唯一はっちゃけられるギャグシーンだったので、すごく楽しかったです」と笑顔で語る。浜浦のお気に入りは、自身が演じるスノウが“TRUMP”の伝説について説明する「TRUE OF VAMP」のシーン。「TRUE OF VAMP」の映像が流れると、末満が「このシーンのはまちゃん（浜浦彩乃）、初演でスノウ役を演じた和田彩花さんに声が似ているよね」と言及。内田が「私も思っていました！」と同意すると、浜浦はうれしそうに微笑んだ。 　内田が2つ目に挙げたのは、ファルスがスノウを連れて逃げるナンバー「葬送終曲『聖痕《スティグマ》』」。末満は、ファルスとスノウが疾走する様子をマイムで表現する演出に触れ、「この場面では、2人が“小劇場走り”をしています。関西の小劇場では割とおなじみの演出なんですけど、東京で初めて“小劇場走り”をやったとき、客席がザワつきました（笑）」と思い出のエピソードを披露した。 　浜浦が選んだ2つ目のお気に入りシーンは、リリー、スノウ、ファルスの3人で話す場面。浜浦は同シーンを振り返り、「ここは時間をかけて何度も稽古しました。未来衣ちゃんのお芝居がどんどん進化していくにつれて、私たちの気持ちも動かされて、良いシーンを作り上げることができたと思います」と感慨深げに語る。これを受け、末満も「稽古残り2日くらいのところで、大森未来衣ならではのファルスが“爆誕”したよね。まさにハマり役だったと思います」と大森の努力を讃えた。 　最後に内田は「ライネス」が流れるラストシーンを挙げ、「ここのセリフ回しが一番苦戦しました。リリーが抱えている憎しみや処理しきれない感情が、自分の心の中にも湧き上がってきて、どうしてもドスの利いたパワー系の声が出てしまうんですよ（笑）。でも感情を込めないわけにはいかないし……発声の仕方を調整するのがすごく難しかったです」と苦労を明かした。 　その後、観客から寄せられた質問コーナーへ。フルキャストオーディションを経て、内田と浜浦をキャスティングした理由を問われると、末満は「決め手は、全体を見たときのバランスですね。逆に2人に聞きたいんだけど、『私はこの理由で選ばれた！』みたいな確信はあったの？」と質問。浜浦は戸惑いながら、「もともと受かると思っていなかったので、合格通知が来たときは本当にびっくりしました。『スノウの雰囲気に合っていた』と言っていただけたので、自分でもその理由だったのかなあと思っています」と答える。一方の内田は「なぜ受かったのか、全然わからないです！（笑）」と率直な思いを明かし、会場の空気を和ませた。 　最後に3人が観客に向けてあいさつ。内田は「末満さんとはまちゃんと、そして皆さんと一緒に『LILIUM』を振り返ることができてとても楽しかったです。Blu-rayやDVDを観て、くり返し楽しんでいただけたらうれしいです」と観客に呼びかける。 　浜浦は、国内のミュージカル作品で初めてイマーシブ音響システム・d&b Soundscapeが導入されたことに触れ、「先ほどご覧いただいた『ライネス』のシーン、低音の響きによってセンターに置いてある定点カメラがガガガ！と揺れていたと思うんですが、地響きを感じるくらい素晴らしい音響が堪能できる作品になっています。まだ『LILIUM』をご覧になっていない方にも、きっと好きになっていただけると思うので、たくさんの方に勧めていただけたら」とアピール。 　末満は「おかげさまで『TRUMPシリーズ』は2024年に15周年を迎えます。テレビアニメ『デリコズ・ナーサリー』の放送やマンガ『COCOON』の連載が始まるなど、いろいろなイベントを用意しているので楽しみにしていてください。『TRUMPシリーズ』に関しては20周年くらいのタイミングで終わらせられたらと思っていて。結末はすでに決まっているんですが、それを人に話すたびにドン引きされています（笑）。ラストに向かってがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします」と締めくくった。