トランプ氏復活に備える中国、経済で混乱も政治的にはチャンスか
香港(CNN) 米大統領選でトランプ前大統領がホワイトハウスへの歴史的な返り咲きを果たしたのを受け、中国は同じ大国である米国とのライバル関係が激化する事態に身構えている。両国の先行きは、不安定かつ相当に予測不可能なものとなる恐れがある。 【写真】台湾海峡を通過するアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 公式には、中国はトランプ氏の勝利に対して中立的な立場を取ろうとしている。中国外務省は6日、「米国の選択を尊重する」と述べた。 習近平(シーチンピン)国家主席も7日、トランプ氏に電話で祝意を伝え、「新たな時代に相互の関係がうまくいく」よう、両国が「適切な道を見いだす」ことを願っていると述べた。 自身の政権の1期目に米中関係は急激に落ち込んだが、トランプ氏は習氏を再三称賛し、「親友」とも呼んでいる。
極めて高い関税
トランプ氏は選挙期間中、中国からのあらゆる輸入品に60%の関税をかけ、同国との恒久通常貿易関係(PNTR)を無効化すると主張していた。PNTRの下、中国には対米国での最も有利な貿易関係が20年以上にわたり認められてきた。 上記の懲罰的措置が実施されれば、中国経済にとって痛手になりそうだ。中国経済は既に不動産危機や需要の減退、地方財政の債務の増加などに悩まされている。 投資会社マッコーリーの推計によれば、関税が60%に跳ね上がった場合、中国経済の成長率は2%低下する公算が大きい。中国が見込む通年での成長率は5%。 アジア・ソサイエティ政策研究所で国際安全保障と外交分野の責任者を務めるダニエル・ラッセル氏は、トランプ氏の大統領就任1期目について、最初こそ習氏を熱心に称賛していたものの、その後は関税を課し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の際には中国政府を中傷したと指摘。2期目を迎えるトランプ氏に対しては、中国政府も警戒しつつ接する公算が大きいとした。 ラッセル氏は、オバマ政権時代にアジア担当の最上級顧問を務めた経歴を持つ。
課題とチャンス
とはいえ、トランプ氏の「米国第一主義」と商取引に根差した世界観は、中国側に有利に働く可能性もあると専門家はみている。 カーネギー国際平和基金のトン・チャオ上級研究員は、「中国政府は予測不能なトランプ氏の対中政策に深い懸念を抱いているが、同時に課題がチャンスをもたらすことも自覚している」と分析。新たな通商戦争の不安こそあるものの、トランプ氏の高関税政策は欧州で非常に不人気なため、中国にとっては欧州との強固な経済関係を結ぶ余地が生まれるとの見方を示した。米国はハイテク分野やサプライチェーン(供給網)に関して、中国と西側諸国とのデカップリング(切り離し)に注力しているが、中国と欧州の経済関係強化はこれに対抗する動きとなる。 トランプ氏が長年にわたり北大西洋条約機構(NATO)など国際的な同盟関係を軽視する姿勢を示しているのも、中国にとっては都合がいい。退任するバイデン大統領は中国の台頭という脅威に対抗するべく米国中心の複数の同盟を慎重に構築してきたが、トランプ氏の次期政権はこれを弱体化させる恐れがある。 トランプ氏の下で米国が内向き志向に転換すれば、それも習氏にとって歓迎すべきニュースとなるだろう。同氏はグローバルサウス(主に南半球の新興・途上国)のリーダーとして、西側の支配と無縁の新たな世界秩序を打ち立てようとしている。