“韓国バラードの皇帝”ソン・シギョンが語るおもてなしの心 日本の歌に感じる美しさとは
深く甘い歌声で、「バラードの皇帝」「鼓膜彼氏」と称される韓国のシンガー・ソングライター、ソン・シギョン。歌詞を大事に歌う彼は、日本語カバー曲の歌詞の世界を理解するために日本語を勉強し、日本語能力試験最上級1級を取得。このインタビューにも、流暢な日本語で応じてくれた。 知的でありながら、時にシニカルなユーモアを交えた彼のトークはバラエティ番組でも人気を博し、韓国では国民的スターとして広く知られている。その人気は、毎年年末にアリーナクラスの会場で「年末コンサート」を開催することからもわかる。今年の12月には、日本でも「年末コンサート」を開催するというソン・シギョンに話を訊いた。 【全ての写真】“バラードの皇帝”と称されるソン・シギョンが昨年末韓国で開催した「年末コンサート」の模様
僕はシンガーなので、歌で勝負する
──12月11日、12日に立川ステージガーデンで「2024 ソン・シギョン年末コンサート 〈SUNG SI KYUNG〉 In Japan」が開催されることが発表されました。毎年ソウルで「年末コンサート」を開催されていますが、今回はその日本版と考えていいのでしょうか。 韓国の「年末コンサート」の流れや内容をそのまま持って行くのは可能ですが、韓国とは会場の規模も違うし、言葉も違うから、日本だけのコンサートと考えてもらった方がいいかもしれません。今年も年末に韓国で「年末コンサート」をやると思いますが、それとは別モノです。僕としては2つのコンサートをやる感覚です。 ──昨年末に韓国で行った「年末コンサート」は、初期の曲から最新曲までを歌ったキャリアを総括したセットリストになっていましたが、日本ではどういう構成を考えていらっしゃいますか。 まだ考えているところなんです。先のことを決めて、それを守るというのは日本の文化ですね(笑)。この間Crystal Kayさんと話していたら、「3年後の仕事の予定を調整している」と言っていたので驚きました。日本ではお店の予約も1年後というのがザラだけれど、1年後、3年後なんてどうなっているかわからないのに。だからといって、準備していないわけではありませんよ(笑)。僕はシンガーなので、歌で勝負するだけ。ラスベガスのショーのようなスペクタクルはありません。どんな曲を歌って、どんなアレンジにして、どんな映像を使うかはなんとなく考えています。 ──昨年の「年末コンサート」では、シギョンさんのダンスが見られました。日本でも見られると嬉しいです。 去年踊ったのは、来てくださったお客さんを「ダンスは嫌いと言っているのに、ファンを楽しませるために頑張ってるな」と喜んでもらうため。踊ろうと思えば、踊れるんですよ、僕だって(笑)。立川のステージは春に行ったZeppツアーより大きいので、そういうコーナーも入れたいのですが、1人で踊るのは無理! ダンサーさんを韓国から連れてくるのも大変なので、まだどうなるかわかりません。 ──韓国の「年末コンサート」のようにゲストが登場する可能性は? それは内緒。でもそう言うと、ゲストがいるってわかっちゃいますよね(笑)。韓国から誰か連れていくかもしれません。 ──昨年末の「年末コンサート」には、DynamicduoやCrushなどヒップホップ、R&Bのフィールドの方をゲストに招いていらっしゃいましたが、ご自身と異なるジャンルのアーティストを招いたのはなぜですか。 料理に例えていうと、僕は韓国料理だけでなく、中華料理やいろいろな料理を出したいし、デザートも出したい人間なんです。でもデザートが作れないから、デリバリーを頼む。そんな感覚です。ヒップホップやダンスは得意じゃないけれど、このコーナーでちょっと盛り上がりたいと思えば、できる人を呼ぶ。逆に僕も、仲よしのアーティストのステージにバラードが必要なときには出演します。韓国では、お互いのステージで得意なことを交換する「ゲスト文化」があるんです。サプライズプレゼントみたいな感じかな。 でも、有名な人ほど忙しいですからね。韓国でやるなら「2時間空けて」ですむけれど、「日本に一緒に行く?」となると、3日は必要になるから。 ──日本でのコンサートでは、日本の歌手の方のカバーを歌われますが、「この曲を歌おう」という決め手はどんなところにあるのでしょう。 僕が一番大事にしているのは、歌詞です。歌詞が素敵な曲は、歌いたくなる。僕は歌詞の内容を完璧に理解したくて、日本語の勉強を始めたんです。あとは、「これを歌うとみんなが喜ぶ」という曲ですね。キャリアを重ねると、俳優さんは作品を見る目ができるし、料理人は味の良し悪しがすぐにわかるようになる。歌手も同じです。言葉は違っていても、「これはいい曲だな」というフィーリングがあるんです。「この曲を歌いたい」とそそる曲が。 ──歌う時に歌詞の世界に気持ちが入るというのは、すごく大事なことですよね。 そうですね。僕はそう思っているのですが、今の時代にはちょっと古い感覚なのかもしれません。昔はメロディ、コード進行、歌詞を4分間じっくり味わって聴いていたけれど、今は「次! 次!」という感覚だから、曲も頭で掴むことが大事とされている。でも僕にとっては、その人物になりきるためにも内容が大事なんです。もちろん歌手なので、どんな曲でも自分のものにして歌いますけれど。