インドネシアのムスリム・メタルバンド、世界最大級のフェスに出演
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【7月4日 AFP】インドネシアでイスラム教徒の少女3人が、メタルバンド「ボイス・オブ・バチェプロット(Voice of Baceprot、VOB)」を結成したのは2014年。この時、10代前半だった3人は、英国で開催される世界最大級の野外音楽祭「グラストンベリー・フェスティバル(Glastonbury Festival)」のステージにいつか自分たちが立つ日が来るとは夢にも思っていなかった。 だが、それから10年。6月26日から30日の5日間にかけて開催され、「コールドプレイ(Coldplay)」やデュア・リパ(Dua Lipa)がヘッドライナーを務めた今年のグラストンベリー・フェスティバルにVOBはインドネシア初のバンドとして出演した。 バンド名は「やかましい声」を意味する。メンバーは、ボーカルとギター担当のフィルダ・マーシャ・クルニア(Firda Marsya Kurnia)さんとベースのウィディ・ラーマワティ(Widi Rahmawati)さん、ドラムのエウス・シティ・アイシャ(Euis Siti Aisah)さんの3人だ。男性優位のインドネシア社会でジェンダーの固定観念に挑戦した曲を作りながら、多数のファンを獲得してきた。 エウスさんは、「正直なところ、グラストンベリーに出たいという夢は抱いていなかった。私たちにとってあまりに高望み過ぎて」とAFPに語った。 故郷である西ジャワ(West Java)州で活動を開始した当時の環境は、決して恵まれていたと言えるものではなかったが、「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)」のカバーやオリジナル曲でファンを獲得し、さらに大物ミュージシャンたちの目にも留まった。「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)」のベーシストのフリー(Flea)もそのうちの一人だった。 ■いつかはインドネシアで国内ツアーを インドネシアの保守的なイスラム教徒からは、メンバーが女性であること、また服装が不適切との批判を受けている。 だがメンバー3人は、自分たちの信念を貫き、音楽を通じて反論してきた。 女性がメタル音楽を演奏するのは言語道断だと非難する保守派に向けて作った楽曲「God, Allow Me (Please) to Play Music(神様、私が音楽を演奏するのをお許しください)」はバンドにとって最大のヒットとなり、ユーチューブやスポティファイで数百万回再生されている。 気候変動や女性の権利をテーマにした曲も書いている。「私たちは、自分たちが見聞きしたことや自分の経験を基に曲を作っている」とボーカルのフィルダさんは話した。 一時は首都ジャカルタに活動拠点を移していたが、その後、故郷に戻り、現在は自分たちのスタジオを建設している。 ベースのウィディさんは、国外で演奏するオファーを「たくさん」受けていると明かした。 だが、VOBにとっての夢の一つは国内での活動だという。 「本当はインドネシアで国内ツアーをしてみたい」とウィディさん。「でも、まだその機会がない」と語った。 映像は6月に撮影。(c)AFPBB News