「AIグラビアが広まって仕事が減るようなグラドルは遅かれ早かれ消える」現役グラビアアイドルくりえみが「AI」で本当につくりたいものとは
グラビアのファンの人たちがいてくれたから
――多くのグラビア経験者が、女優業やその他タレント業に活路を見出すとグラビアから去っていきます。くりえみさん自身は「経営者としての時間が9割」ということですが、むしろなぜグラビアを続けているのですか? シンプルにグラビアが大好きということもありますが、一番はグラビアのファンの人たちの存在です。彼らがいてくれたから今があります。 それこそ数年前までコミケで自作の写真集を販売することで、生かしてもらっていたので。 ――AIを使ってでもグラビアをやり続ける理由は? そもそもAI自体、単体ではなくリアルな事業と掛け合わせることで、いいシナジー効果を生み出すものだと思っています。エンタメ業界以外では教育分野などでも使われていますが、AIと人とがタッグを組むことで、よりわかりやすい授業になるといった事例もあるそうです。 ――写真集以外にもAIを活用したバーチャルヒューマン事業も行なっていますが、こちらもタレント活動の一環ということですか? 簡単にいえば、私をAIタレント化させようとしています。ChatGPTなどの対話型AIに私自身を学習させて、AIで作った私の画像データと学習データを組み合わせることで、私のデジタルヒューマンが実装できるんです。 ――具体的にどういったシーンでの活用を目指しているのでしょうか? 主に考えているのはライブコマースです。日本でも美容ブランドやアパレルで国内向けに広まり始めていますが、海外に日本製品を売ることに需要があるんです。特に中国ですね。
AIの可能性は私の可能性でもある
――中国はライブコマースが浸透していると言われていますね。 私の知り合いの中国人に、ライブコマース4時間で2000万円売り上げるインフルエンサーがいます。何がすごいかというと、インスタグラムのフォロワー数は30000人程度なのに、インスタライブをしたら700人くらいが最初から最後まで見ているんです。 フォロワーが少なくても、その多くがアクティブユーザーであり、その全員が富裕層。日本でそんなフォロワーを持っているタレントはほとんどいません。 ――海外ライブコマースの市場に参入しようということなのですね。 一番メリットになるのが言葉の壁を突破することです。私は中国語は話せませんが、AIなら言語変換ができるので心配もいりません。中国だけでなく世界中に顧客をもつことができます。 ――ライブコマース以外にもAIで何か仕掛けようと考えているんですか? 現在、私のAIを作っていますけど、本人の実在しないAIタレントを生成してプロデュースしようと思っています。AIタレント事務所みたいなものを作れたらなと。 今でこそ、Vチューバーはたくさんいますけど、それもキズナアイ(※1)という存在があったからこそじゃないですか。私はそんな先駆者になりたいんです。まだ存在しないAIタレントという分野なら、それが達成できると思っています。 ――最初にAI写真集への批判について、「誰もやってないことに最初に手を出せたということだから誇らしい」と言っていたのは、そういう意味だったんですね。 私より実績や実力のある経営者や起業家はたくさんいます。それにレッドオーシャンになれば、大企業の資本力には勝てません。だから現時点でAIに賭けているんです。 AIの可能性は私の可能性でもあるのかもしれないんです。 後編につづく (※1)Activ8株式会社により制作され、現在はKizuna AI株式会社に所属している、日本のバーチャルYouTuber、音楽アーティスト。人工知能を自称している。バーチャルYouTuber界のパイオニアとされている 取材・文/鯨井隆正 撮影/松木宏祐