富士山静岡県側3登山ルート、10日開通 訪日客にぎわい予想/マナー違反や「弾丸」流入懸念
富士山静岡県側3登山ルート(富士宮、須走、御殿場)は10日、全面開通する。山小屋などによると、訪日観光客を中心に登山客の増加が予想される。一方でマナー違反の問題は近年深刻化し、今夏は山梨県吉田ルートの規制の影響による弾丸登山者の流入など懸念材料が増えた。本県が試行する県富士登山事前登録システムの抑止効果は見通せず、不安を拭いきれないまま開山を迎える関係者もいる。 富士宮や須走ルートの山小屋によると、円安や新型コロナウイルス禍の収束により、特に訪日観光客の個人、ツアー予約が堅調。関係者から「予約の7、8割が外国人」「旅行代金のつり上がりの影響か、日本の旅行会社の方が苦戦している印象」などの声も聞かれ、例年以上に外国人登山者が活気をもたらすシーズンになるとの見方がある。 「弾丸登山や軽装、不法投棄などの問題が深刻化するのでは」。須走口5合目の山小屋・東富士山荘の米山千晴社長(73)は盛り上がりを期待する一方、不安を口にする。本8合目で吉田ルートと合流する須走ルートは、山梨県側の登山規制や通行料徴収を避け、計画性やマナー意識の低い登山者の流入も想定される。「本県側の事前登録は任意で、対策として弱い。山小屋などによるマナー違反への対応にも限界がある」と不満を口にする。 富士山表富士宮口登山組合の池田裕之組合長(51)も「山梨県側の開山後、閉山期間中と知りながら富士宮口から登る外国人登山者らが相次いでいる」と危機感を募らせる。 御殿場口では、新5合目周辺の自然休養林の散策や付近の山小屋までの往復など富士山の雰囲気を楽しむ観光客も多い。市関係者は「登山ルートに複数箇所から出入りでき、新5合目のチェックポイントで全ての登山者を把握することは難しい。観光の目的も多彩で、システムがなじみにくい面がある」と指摘する。 県は事前登録システムで試験的に入山管理する今夏の課題を検証し、将来の入山管理の仕組みづくりに生かす方針。須走口5合目で未登録者への対応などに当たる小山町シルバー人材センターの臼井孝行さん(69)は「登山者の混雑発生をはじめ、トラブルが出てくるかもしれないが、マナー違反のない登山環境の実現に貢献したい」と話す。
静岡新聞社