乙女心が隠しきれない…!? 宇宙世紀ガンダム「史上最強の美女」の“秘めたる内面”
■常に孤独にさいなまれ、苦悩していた!?
グリプス戦役でティターンズとエゥーゴが激突し、両陣営は戦力を消耗。結果として、そこにつけ込むかたちで本格的に侵攻したのが、アクシズから名を改めた「ネオ・ジオン」だ。 シャアを失ったハマーン(実際は生存していたが、彼女はそう思い込んでいた)は傷心だった可能性もあるが、少なくともテレビアニメ『機動戦士ガンダムZZ』ではその様子は見られなかった。 しかし、彼女が孤独と戦っていたのは容易に想像できる。そもそもハマーンはずっと孤独を感じ続けていたのではないだろうか。 稀代のニュータイプ能力を持ち、パイロットとして高い適性も有し、政治的な手腕にも長けていた。弱冠16歳でアクシズの指導者に就いたほどだ。おそらく、その才能を疎むものも少なからずいただろう。 そのうえ、ひそかに想いを寄せていたシャアが離れてしまった。「誰も理解者がいない」という思いが、ハマーンの心を歪ませてしまったとも考えられる。 『ガンダムZZ』の最終話「戦士、再び……」でハマーンとジュドー・アーシタの交戦中、戦場で散った人々の意思がジュドーのZZガンダムを助ける力となるのを目撃する。しかし、ハマーンはそれを認めず「人は生きる限りひとりだよ」「人類そのものもそうだ!」という持論を述べた。 このセリフにはハマーンがこれまでたどった人生やその悲しみが表れているようで、何度観ても心に響く……。
■自分が認めた存在によって、しがらみから解放
そんなハマーンにとって救いとなったのがジュドー・アーシタの存在だと考えられる。ハマーンは戦闘中に何度もジュドーを自分のもとに誘っていたことから分かるように、彼を特別視していた。この状況は『Zガンダム』のときに、シャアに呼びかけていたときにも似ている。 それがシャアに対する想いと同じものなのかは分からないが、少なくとも彼女の心に空いた穴を埋める存在としてジュドーを求めていたことは想像がつく。 そしてジュドーの存在が、最後にハマーンを救ったのも間違いない。ジュドーは、ハマーンに対して「憎しみを生むもの、憎しみを育てる血を吐き出せ!」といい、ハマーンは「吐き出すものなどない!」と答えている。 この言葉はハマーンの強がりではなく、すでにジュドーと出会ったことで「(結果として)吐き出した」という意味とも考えられた。 実際、ジュドーのZZガンダムに敗れた際、ハマーンは潔く負けを認め、とても晴れやかな笑みを浮かべていた。少なくとも彼を恨むような表情ではない。特別な存在と感じていたジュドーに一騎打ちを挑み、その結果すべてのしがらみから解放されたことで、はじめて穏やかな気持ちになれたのかもしれない。 ハマーン・カーンという女性は、いわば作品のラスボスのような立ち位置でありながら、時折人間的な弱さを隠しきれない点が魅力だった。まだ少女だった頃から人の上に立たされ、22歳の若さで散った彼女が、本当の幸せをつかむ世界線も映像作品で見てみたいものだ。
津田まさき