『フェルマーの料理』志尊淳が高橋文哉に最後の教えを施す 新しい道へ歩み始めた岳と広瀬
頂点を知るものだけが、抱えている孤独がある。真理に辿り着けるのは、孤高に打ち勝つ人間だけ。高みに行けば行くほど、人は孤独になる。では深い闇と孤独を知った人は、誰かを照らす光となることができるのだろうか。『フェルマーの料理』(TBS系)第7話では、孤独を抱えた料理人・海(志尊淳)が岳(高橋文哉)に最後の教えを施した。 【写真】海(志尊淳)の手を握る岳(高橋文哉 前回超高級ホテルで行われるパーティーのコース料理のコンペに勝った岳は、レストラン「K」を代表してフルコースをまとめ上げることに。しかしこのパーティーは数学界で権威ある楠瀬正美賞の受賞パーティー。かつて数学オリンピックで圧倒的な才能の差を見せつけられ、トラウマ的存在である広瀬(細田佳央太)が、この賞の受賞者であることを知り、岳はとてつもないプレッシャーを感じていた。 「全ては数学のためにやってるんだ?」「僕たちは共に手を取り合って、数学で真理の扉を開くんだ」 自分と岳の磨き上げた力で真理の扉を開く、という点では広瀬も海と同じようなことを言っている。しかし、粘度の高い言葉の言い回しは完全に“ヤバいやつ”である。岳でなくとも、あのニチャッとした笑みには警戒心を抱いてしまうだろう。 パーティーを1週間後に控えたある日、なんと広瀬はレストランの厨房に突然押しかけてくる。その日の営業終了後、岳は海に促され、広瀬との関係や数学者の夢を諦めた理由をみんなに話す。「数学オリンピックのことはきっかけに過ぎません。僕が数学を諦めた理由は、広瀬くんの存在そのものです」と岳は語る。「だったら、完璧な料理を食べてもらえればいいよ」という孫六の言葉を皮切りに、厨房に生まれる一体感。そこには事情は違えど、それぞれの事情の中で敗北の味を知っているレストランKのメンバーだからこその優しさがあった。 そんな中、海は「みんなを統率して、フルコースをまとめ上げろ」「完璧を超えろ」と岳に指示を出す。料理に悩む岳の姿に、海も何やら思うところがある様子。 「岳に何を求めてるの? もしかして後継者にでもするつもり? 岳のこと」 海の秘密に詰め寄ったのは、蘭菜(小芝風花)だった。蘭菜は、以前の西門(及川光博)とのやりとりから岳が“何か”を抱えていることに気がついていた。「私じゃダメなの?」という言葉に重なる、心配そうな表情の裏に秘めた想いの正体も気になるところ。 一方、自分のリーダーとしての統率力のなさに自信をなくす岳。そんな彼を励ましたのは「あいつになれなかった」と寂しそうに笑う布袋だった。その卓越した観察力で厨房のメンバーの武器を分析した布袋は「俺になるな、朝倉海になれ」と岳を励ます。 「俺は……これからも神に挑み続けたい。お前と一緒に。頑張れ、岳」 今回の見どころと言えば、海から岳へのストレートなエールだろう。岳のおかげで変わったのは、レストランKのメンバーだけではない。他でもない海自身も、岳の影響を受け、少しずつ変化していた。 一方、渋谷(仲村トオル)や淡島(高橋光臣)と密会を重ねていた海は残酷な現実を突きつけられる。「奇跡は起きない。お前はもう、料理はできない」と渋谷に告げられた海は、「俺の後継者はあいつだ」と蘭菜に打ち明ける。今回は海が以前放った“時間がない”という言葉の伏線回収となったわけだが、ここからどんどんと海の秘密が暴かれていく予感。 いよいよパーティ当日。岳は広瀬のもとに足を運ぶ。しかしここで、まさかの展開が。「余計なものは口に入れたくない」と広瀬が言い出したのだ。彼は数学の道へ連れ帰るために、岳を迎えにきたのだった。名誉ある賞を受賞した人の発言とは思えないスピーチの内容といい、この広瀬のキャラもなかなかに濃い。「彼は数学以外、何も興味がない」と気落ちする岳に、「いつもみたいにさ、解けよ」と孫六が肩を叩く。序盤の岳の皿洗いからのスタートを思えば、今のコックたちの絆はあまりにも眩しい。 そしていよいよ、岳をサポートするべく海自身も厨房に。時間がない中での2人の絶妙なコンビネーションには思わずワクワクした視聴者も多いはず。岳が今回作ったのは、フィボナッチ数列を使った構図を活かした料理。見事に広瀬の心を掴んだ岳は、「この料理は僕の大事な仲間の力をまとめたものなんだ」と仲間の存在を強調する。「子どもになった自分たちとはもう、お別れだ」と握手を交わした広瀬と岳。2人の別れは、それぞれの道への新しい始まりを象徴するシーンでもあった。 さてここまでは“いつも通り”、岳がライバルを打ち倒し、また一つ成長した姿が描かれていたわけだが、今回はラスト10分が衝撃の展開に。第7話は、海からレストランKの料理長を頼まれた岳の「海さんの言ったことは全部嘘だった」「それが、海さんを見た最後の夜だった」というモノローグで締められた。おそらくここから、岳の闇堕ちの真実へと繋がっていくのだろう。真理の扉が開いた先で、いつものように海様が待っていると願わずにはいられない。
すなくじら