あなたの会社は大丈夫…? 企業「後継者不在率」は61%…’25年までに650万人が失業の可能性も
後継者不在による倒産件数は、過去最高水準に
後継者不在による倒産件数は昨年、過去最高水準で増えているという。東京商工リサーチでは、そのうち経営者の死亡や体調不良が約9割を占めていると分析している。 東京商工リサーチの「後継者不在率」の調査によると、30代や40代の若い経営者では9割前後。一方、60代では約46%、70代が約30.5%、80代でも約23.8%となり、経営者の年齢が高く事業承継の判断や対応が急務なのに、手つかずになっている実態が浮かび上がってくる。 日本政策金融公庫が昨年、インターネットで実施した「経営者の引退と廃業に関するアンケート」によると、「後継者を探すことなく事業をやめた」が95.9%を占めた。その理由は、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていなかった」が55%と最も多かった。廃業を決めた企業は経営者のみで、従業員がいないことが多い一方で、規模の大きな企業では事業承継が増えているとも指摘する。 中小企業庁は、中小企業経営者の高齢化が進み、経営者年齢のピークはこの20年間で50代から60代や70代へ上昇したと分析している。後継者不在は中小企業の廃業の大きな要因の一つとし、経済・社会を支える雇用や技術が失われる可能性があると危機感を強めている。そこで、事業承継による世代交代や、M&Aによる規模拡大が企業の成長に効果的として、その支援を推進している。 ◆事業譲渡の妨げになっている高額な「M&A事業者の仲介料」「資産査定の費用」 中小企業庁が昨夏まとめた「中小M&A推進計画」の主な取り組み状況によると、中小M&Aの実施件数は増えており、年間3千~4千件程度とみている。 前出の元大手行員でM&A仲介事業者は、M&Aビジネスをめぐる実態をこう話す。 「地元の地方銀行が、できれば同じ地域内で相手を探しますが、元々地方は経済的なキャパが小さく、東京の仲介専門会社に依頼するケースも増えています。 ただ、東京の専門会社の中には儲けに走るあまり、経営情報の守秘義務や買い手の素性などを無視して高く売ることだけを目指して走り回り、問題が起きたりもしています」 中小・零細企業は、経営者の手腕に依存するところが少なくない。後継者を探しているとか、事業承継先を探しているという情報は、その経営者が退くことを意味するため、将来性に不安になった取引先が撤退するなどの問題が起きやすい。このため、M&Aをめぐる情報は守秘性が高いとされる。 ある経営者が譲渡先を探していることがわかると、「競合企業が取引先をごっそり引き抜くこともあるかもしれません」と東京商工リサーチの坂田さんは話す。販売先や資材納入の取引先にとっては、新たな譲渡先の経営がどうなるのか不安になるなかで、既存の競合企業に取引を移した方が安心にみえるのかもしれない。 M&Aをめぐる問題について、坂田さんは仲介事業者の報酬が高いことや、デューデリジェンスと呼ばれる資産査定の費用の高さを挙げる。M&Aに際して、売却企業の資産を査定するが、その費用が高いとされている。また、M&A仲介事業者の成功報酬は、成約額の2割くらいともされ、それとは別に最低費用を設け、その額が2千万円くらいのところが少なくなく、安いところでも1千万円などとされる。 こうしたM&A関連の費用が高額になることも、事業譲渡の妨げになっているとみられている。坂田さんは「中小・零細事業者にもM&Aが身近になってこないといけない」とみている。M&A仲介ビジネスの透明性が高まり、利用しやすくなれば事業譲渡が進み、後継者難の問題に光明が見えてくるかもしれない。 取材・文:浅井秀樹
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